懐かしの図書館

文字数 943文字

 子どもの頃から本が好きで、夏休みになると毎日自転車を走らせ、地元の図書館へ入り浸っていた。
 当時は児童書をよく読み漁っていた気がする。
 特にファンタジーものが好きで、何冊も続編がある長編を好んだ。
 とにかく文字を読みたいと、文字がたくさん載っている長編が好きだったのだろう。
 それから何年も経ち、社会人になってからというもの、図書館へと足を向ける機会は減った。
 毎日の労働により、働く方に意識が向きすぎて、疲れ果てた体で図書館へ行く選択肢が頭から消え失せてしまっていたからだ。

 休みだった今日、たまたま地元の図書館の近くに寄ったので、気が向いた私は十年以上ぶりに図書館へと入った。
 私がの記憶に残っていたよりも、だいぶ内装が変わっていた。
 そりゃあ十年以上も経っていれば、内装だって変わりもするか。
 それでも、なんとなく昔の面影は残っている。
 改めて大人になってから訪れたここは、あの時からどれだけ内装が変わっても、そこに昔からあった空気感は変わっていない。
 まるで子どもの頃に戻ったかのような気分になり、ついつい児童書のコーナーへと足を向けてみると、小学生にも満たない幼い子がとても熱心に本を読んでいた。
 その姿が、いっぱい本に触れて、あらゆるものに好奇心旺盛だったかつての私の姿に重なって見えた。
 児童書を読むたびに、本は人の心を、想像の力を豊かにしてくれると思っていた。
 心が豊かなら、諍いは生まれない。
 心が貧しいと、諍いが生まれてしまう。
 きっと誰だって優しい世界で生きていたいから、優しくあろうとする。
 ちょっとだけ、昔持っていた初心に立ち返れた気持ちになれた。

 子どもの頃は児童書のコーナーばかり見て回ってたものだけど、ほかのジャンルの棚に目を向けると、こんなに色んな本があったのかと気づかされる。
 昔はネットなんてなくて、図書館で調べないと資料が見つからなかったりした時代を生きてきた。
 現在はなんでもネットで調べれば出てくる。デマも真実もごちゃまぜで、検索欄に行儀よく並んでいるのを数え切れないほど見てきた。
 電子媒体もいいけれど、時には昔から存在する紙媒体にも注目してみるのも面白いのかもしれない。
 電子媒体にはない紙媒体独特の魅力が、きっとそこには詰まっている。
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