第37話   教室2

文字数 959文字

「バカ者。鬼が人を救ったなどと偉そうに言うな。」

ドーラが猫形態で現れてインコを威嚇する。

シャーってやつだ。

「あそこを見よ、10人程の生徒が真っ黒けになっているじゃろうが。あやつらはイジメの加害者達じゃ。」

「こやつら鬼どもは因果応報ではあるが。1人を救ったと見せて11人に業を負わせたのじゃ。」

「鬼どもは善をなしたわけじゃないんじゃ。ただ善をなしたフリをして魂を集めているだけじゃ。」

「うーん、それじゃダメなの?」

あきらが頭を抱えている。

どうやって人を救うかなんて考えた事もなかった。

むしろ、あきらもイジメの対象で友達と言えばユキオと洋二ぐらいしかいなかったのだから。

「お前は何もわかっていない。元々他人を貶めようと言う性質は人間なら誰でも持っておる。スキルみたいなもんじゃ。」

「じゃがそれを使うように仕向けるのは鬼や妖じゃ。こやつらは自分で種を蒔いて刈りとるだけじゃ。」

インコと猫が机の上でなんか言っている。

塚田優子がこっちを見て目を丸くしている。

あー。こいつら可視化したまんまか。

「ドーラも鬼なのにそう言う事言うんだ。」

ユキオが関心している。

「ユキオ、ドーラは鬼の中でも別格だよ。」

「黙れ、アウラ。余計なことを言うでない。」

先生がぱたりと倒れた。

ふわりと先生の体からなにか丸いものが出て来た。

黒い影がそれをつかもうとするがアウラがその影を掴む。

あきらがスマホを出して呪を唱える。

「・・・六根清浄・・・休息万命・・・急急如律令!」

「この場合それでいいの?」

とユキオが言う。

「だって他に思いつかないんだ。」

とあきらが答える。

「案外いいかげんじゃのう。」

「別に平易な言葉でいいんじゃぞ。」

ドーラが言う。

「先生の業を清め魂と魄を戻せ!急急如律令!でどう?」

ドーラがうなずく。

「いいんじゃないか。で、最後はそれね。」

「だってその方がそれっぽいし。」

「緊張感がないなー。」

ユキオが言う。

でもなんでこの場面で狐の耳としっぽがいるんだ?

「俺もあきらの式神っぽくなるかなって。」

ユキオの感性はよくわからん。

スマホのディスプレイが光って描かれた護符の文字が先生に向かう。

影がつかんでいた魂が先生に戻り並んでいた黒い人形(ひとがた)が掻き消える。

同時に10人の生徒たちからも黒い影が抜けていく。

彼らには生きて社会的な制裁を受けてもらおう。






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