第24話   朱慈鬼(シュジキ)

文字数 654文字

あの二人の少年達からは懐かしい匂いがした。

多分、子孫なのだろう。

蘆屋はそのままだし和泉は多分、母方の血を引いているのかしら。

1000年以上も昔の事。

阿部晴明や蘆屋道満がまだ若くて在野の人であった頃。

二人の出自はわかっていない。
特別高貴な家の出ではないと思われる。

平安時代は都こそ公家達が一見風雅な世を楽しんで居るようだが一歩都を出ると飢餓と流行り病い、そして盗賊や鬼、妖が跋扈する時代であった。

都の中でさえ夜な夜な百鬼夜行が夜を支配していた。

ここは昔に都であった名残りが僅かに残る古い街だ。

藤原の某かの荘園があり、かろうじて市なども立つ当時ではまだ都会の方だ。

元々都であったこの地を地鎮していた結界が放置されて働きを失ってしまった為に冥界の門が開いていた。

百鬼夜行はここを発端として魂魄の豊富な都を目指すのだ。

鬼や妖の餌食になるのは都の者だけに限るわけではない。

この地から都までの道のりやその周辺に居るものとて無事ではない。

その頃、無名の二人の少年はまだ陰陽師でさえなかった。

だが二人には知識こそ身につけてはいなかったが強い異能があった。

荒狂う鬼達や妖に居場所やこの世にいる意味を与え社に封じてこの地を鎮めたのはその二人の少年達だった。

少年達は夢を掲げて都に向かい、この地から去った。


1000年の時間を経て何やらあの時を彷彿とさせる二人の少年が来た。

鬼の私に居る場所と意味を与えてくれたあの子達を重ねて見てしまう。

なんだか少し胸がときめいて楽しくなって来た。

「ドーラめ上手いことやりおって、少し羨ましいぞ。」
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