第14話   呪い3

文字数 1,119文字

人間の視覚というのは割といい加減な物で見た物をそのまま認識するわけではないらしい。

見ていても既存の認識で判断できない物は見なかったり、他の物として認識してしまったりするようだ。

本来は視覚ではとらえられない現象を見えるようにする力をあきらが持っているのだろうか?

そもそも、あきらが見ているこの現象と、俺が見ている現象の姿は同じなのだろうか?

ユキオは説明の付けがたい状況を目の前にして恐怖感よりも知りたいという好奇心の方が強いのに自分で驚いている。

バシッと言う木の枝が折れるような音がすると、部屋の中の物が音を立てて振動し始める。

人の形はますますはっきりとした形になり、それはなんだか見覚えのある女性の姿になった。

それは水面に映った影のように揺れて、頼りない感じがする。

女性姿が口を開いて何か言おうとしているが揺らめきが激しくなり姿を変えていく。

短い間にそれは菩薩や如来風の衣装の姿になり鬼や妖などに姿を変える。

その姿たちは、なんだか何かをあきらに伝えようとしているようだ。

真美と紀子は部屋の中央に座ったまま硬直したようになってその姿を凝視している。

揺らめいていた人の姿が再び洋二の形になると二人とも声をそろえて何か呪文の様な物を唱え始めた。

「鳥居・・・地下街・・・闇・・・・黒い・・・」

洋二の姿が苦悶の様相を示すと真美と紀子は気を失ったようになって倒れた。

直に人の姿は形を失い黒い炎の様な物になってしまう。

すると、いままで抑えつけられていたかのように振動していた部屋の中の物が飛び回り始める。

ドーラが背中の毛を逆立てている。

鉛筆が矢のようにあきらに向かうが顔の直前まで来てはじかれたように床に落ちる。

ありさがあきらの横に立って長い髪の一本一本を触手のように広げて防御している。

「臨・兵・闘・者・皆・陣・裂・在・前・・・オンキリキリ・・・」

あきらはぶつぶつと口の中で何かを唱えながらポケットからスマホ引っぱり出している。

「除霊とかにスマホってどうなんだ?」

とユキオが言う。

あきらは横目でユキオを見ながら目だけで笑う。

「・・・・ノウマクサンマンダ・バサラダンセン・ダマカラシャダソワタヤ・ウンタラタカンマン・・・」

「不動金縛りの法を使うのか。」

ユキオが言う。

本などでは読んだことはあるが実際に使うところを見るのははじめてだ。

陰陽道って言うのは結果さえ出ればなんでも使うって言う感じ。

神道も仏教も密教も道教もなんでも来いだな。

祝詞を上げるかと思えば真言を唱えたり。

五芒星や魔法陣だって使っちゃう。

それでさらにスマホ?

ユキオも知識だけはあるので真似事ぐらいは出来ないことは無いが実践する機会はそうそうあるものではない。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み