第20話  結界

文字数 1,026文字

第20話 結界

この地下街は真ん中の「泉の広場」から5つの商店街が放射状にヒトデの形に広がっている。

地下街なのでアプリのマップなどでは分かりにくいがそれぞれの先端の出口の位置をマークするとその形状は良くわかる。

地下街案内図を見ても良いのだけれどね。

マップを見て気がつくのはその先端にほど近い所にそれぞれ神社がある。

朱慈鬼神社(しゅじきじんじゃ)

青海鬼大社(おうみきたいしゃ)

羅烏那鬼神社(らうなきじんじゃ)

刹弥鬼神社(せつやきじんじゃ)

阿毘邏鬼大社(あびらきたいしゃ)

いずれも神社なのに鬼を祀ると言った珍しいはずの神社が5社もこの地域に集まっている。

鬼を祀ると言うのはその地に居た鬼を鎮めると言う事とその鬼に他の鬼を抑えてもらうという意味がある。

「わしらは人の都合で神にされたり、妖(あやかし)にされたり、そして鬼にされたりといろいろな形で祀られておる。」

「人の利にかなえば神。人に害をなせば悪鬼じゃ。わしらそのものは何も変わるものではない。姿はいろいろ変えられるがのう。」

「こんなのはどうじゃ。」

ポンっとドーラが変化する。

角を無くしてストレートの緑色のロングヘア。

なんか綺麗なお姉さんになった。

ドレープのたくさん入った薄絹を重ね透明な生地を宙にめぐらせた羽衣の様な衣装。

「どうじゃ。天女のようじゃろ。ふふふ。そう言う事じゃ。」

まあ人間を超越した存在だからなんでもありか。

「ねえねえ撮っていい?」

なんかたくさんの人がカメラやスマホを向けてくる。

ドーラが調子に乗ってポーズをとる。

「これってなんのアニメのキャラのコスプレ?」

「『異世界天女のチート生活』のトーリじゃない?」

「『女神は畑で本気だす』のメレロでしょ。」

古書店の前がイベント会場みたいになってきた。

いつの間にかありさまで一緒になってポーズをとっているし。

「集まらないでくださーい。」

「通行の妨害にならない様にして下さ〜い。このイベントの責任者の方ー。」

地下街の管理の人が来てしまった。

「撮影の邪魔すんな。」

とか言い出す奴までいる。
お願いだからことを荒立てないでね。

「おー。面白いことになっているじゃん。」

通りがかりで蘆屋ユキオまで来た。

こいつカバンから狐の耳と尻尾のセットを出して来た。

『異世界天女のチート生活』にでてくる「妖狐のドン」じゃないか。

ユキオは変にかっこいい男前なので女子に大人気だ。

この状況をさらに盛り上げてどーする。

地下街の管理の人には叔父の亮(とおる)が怒られた。

気の毒だ。


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