第19話 地下街2
文字数 643文字
「またドーラをいじめてる。ダメよ。」
サキがドーラを抱き上げる。
それでもドーラはあきらの服をつかんで離さない。
「いじめられてばっかりなのにあきらがいいの?」
「わしはこいつの式鬼じゃからのう。」
あつかましい様ないじらしい様な微妙な感じ。
見た目が小さな子供なのであまり邪険にすると虐待みたいに見えるし、面倒だ。
「変死事件に地下街の照明事故それからこっくりさん、なんだかいっぺんに起こっていない?」
サキが言う。
「こんなに霊の類いが落ち着かないのも今までなかったことだし。」
あきらは過去を振り返ってみるがこんなことは無かった。
「冥界の門が半開きになっておるからじゃろうよ。いつもはしまっているもんじゃし。」
「なんで半開き?」
「どっか結界に綻びがあるんじゃないか?」
「ドーラにはどこかわからないの?」
「人間界の事じゃからわしにはわからん。じゃが遠くない。ごく身近にある結界がどーにかなっとるのじゃろう。」
「遅からずここであった様な夜行が起こる、もっと大きな百鬼夜行が。」
「それってなにが起こるの?」
「通りがかりに命を奪っていくのじゃ。吸い取る様にのう。」
「吸魂妖?」
亮がつぶやく。
「ああ、禍邪(カジャ)のことを言っておるのか?あいつは気のいい奴なんじゃが。まあ人間からすれば恐怖じゃのう。」
「鬼や妖(あやかし)が気がいいって?」
「サキや、あいつらが魂を食うのはおまえ達が牛や豚、鶏や魚を喰らうのとなにも変わらん。人の善悪を当てはめることはできん。」
「何よ急におばあちゃんみたいに、ちっちゃいのに。」