第7話 こっくりさん3

文字数 1,002文字

燃えあがる炎の形をした黒い影は天井まで届いている。

天井の照明が次々と壊れていく。

窓ガラスが部屋の内側に向けてたわみ砕ける。

机や椅子がいっせいにガタガタと音をたててうごきはじめる。

生徒たちは、逃げることも出来ずに頭をかかえてうずくまっている。

飛び散るガラスはまるであきらを避けるようにして、あきらの周囲10センチ程で落ちてしまう。

無意識に結界をつくったのだろう。

あきらはポケットの中からスマホを取り出してアプリを起動する。

口の中で何かブツブツつぶやいてから黒い炎の形の物に向ける。

スマホは光の塊のようなものを画面から出現させる。

光の塊は晴明紋を描きながらそれにぶつかると弾けて消えた。

いきなり黒い炎の形の物は消え、教室は静まりかえる。

仰向けになぎ倒された優子はまるでひきつけられる様にあきらの一連の行動に見入っている。

優子とユキオ以外には誰にも見られることはなかったようだが。

生徒たちが恐る恐る立ち上がると、どこからはわからないが甲高い笑い声がひとしきり教室に響いた。

黒い炎の形の物があった机の上には燃えたはずの、こっくりさんに使っていた紙が残っていた。

3人の女子は身体的には手足に打撲傷を受けた程度で済んだようだが、心理的には相当のショックを受けているようだ。

あきらは教室の隅に白い影を見た。

白い影はまた何かを訴えていた。

しかし、以前よりも一層影は薄く弱々しい。

あきらは必死にそのものの訴えに耳を傾けるのだが徐々に薄れていくそのものからは何も聞きとることは出来なかった。

「あきら、あの光はいったい何だ?」

ユキオがうれしそうに聞く。

「これだよ。」

あきらはポケットからスマホをだしてユキオに見せる。

画像保存アプリが起動していて黒地に赤色の一筆書きの星の図が描いてある。

「ふーん晴明紋か。霊能者が使えばこれがあんなふうになるのか。」

ユキオが感心している。

「誰でも使えるよ、その図に力があるんで、使う人に力があるわけじゃないんだ。」

「ふん、おまえが自分の力をしらんだけじゃ。」

ドーラは不満そうだ。

「でも、あんなふうに光ったりは、力というか、そういう感受性を持つ者にしか見えないかもしれない。」

「ただ、スマホの画面を対象に向けているだけ。おまえにも見えたって事は、おまえにもそういう感受性があるってことだな。可哀想に・・・。」

「可哀想に・・・なのか。」

「人には別に見えなくてもいい事や物がいっぱいあるってことさ。」
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