第12話   呪い1

文字数 759文字

あきらのスマホの呼び出し音がなる。

「あきら君?」

せっぱつまったような優子の声がする。

「真美と紀子が変になっちゃたの。こっくりさんが取り憑いたのよ、きっと。」

「呪いが、呪いが、って何もないところをじーっと見ながら言い続けてるの。」

「今、あ、うん、今二人ともうちに来てるの、さっきまで何ともなかったのに、急に・・・。」

あきらは片一方の手で携帯を持ちもう一方の手でポケットから何か模様の書いてある紙片を取り出すと、一枚をサキに渡し、もう一枚をセロテープでドアに張りつけた。

「優子のうちに行ってくる。」と言ってあきらは家を出る。

いつのまにかありさとドーラがあきらの後を歩いている。

ドーラはなぜか猫形態になっている。

憑衣現象のほとんどは自己暗示のような催眠効果ということで説明されている。

だから、暗示さえ解ければ憑き物は落ちる。

それは、憑かれた者が納得できる形であればどんな方法でもいい。

それは、お払いでも、催眠療法でも同じだ。

神道のようなお払いが効くと信じている人にはお払いをすればいい。

エクソシストのような悪魔払いが必要だと考えている人にはそのようにすればよい。

方法は相手の習慣や信仰にあっていれば何でもいい。

神も悪魔も霊も人の心の中に住んでいるだけの存在なのだろうか?

それなら、あきらは自分の心を外界に投射して霊を見ているのだろうか?

ありさは?ドーラの存在はどう説明するのだ?

あきらが自分の心の中で作りあげているだけなのだろうか?

しかし、それが本当だったとしても、虚構として片付けることはできない。

日常の中で現実として認識していることだって、自分の五感で捉えた感覚を脳の中で構築している。

霊に対する認識のしかたと何も違いがあるわけではない。

自分が見たり感じたりしたことは事実として、現実として認めるしかないのだから・・・。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み