第31話   野良鬼1

文字数 1,298文字

さすがにドーラのいるあきらの部屋にはすねこすり達も入って来られないようだ。

ドーラが怖いんだ。

そのかわりサキの部屋には小妖達が押し寄せていた。

とはいえ小妖達には質量がないし、
能力のある者にしか見えない。
大騒ぎしてもやはり能力を持つ者にしか聞こえない。

サキに能力が?

それはおそらくドーラが身近にいる事で能力が覚醒されたのかもしれない。

「うわー。もうこんな時間じゃないのー。」

サキが小妖を跳ね飛ばすように起き上がる。

すねこすりや家鳴が布団からゾロゾロ出て来る。

「あんた、何で目覚まし時計を咥えてんのよ。」

アマビエがぺっと目覚まし時計を吐き出す。

「遅刻よ、遅刻。」

サキはパニックになっている。

「サキ、今日は日曜日じゃぞ。」

ドーラが言う。

サキは気まずそうに近くにいたすねこすりをつかまえて抱き枕にすると2度寝した。

ありさはキッチンで朝食の用意をしている。

猫又がありさに懐いていて手伝いをしている。


急に室内の空気感が変わる。
小妖達が一斉に今までは避けていたドーラのまわりに集まる。

「都合のいい奴らじゃ。無理もないがのう。」

玄関のチャイムがなる。

あきらが扉を開けると茶髪をツンツンにしたスタジャンの少年が立っている。

「おまえがあきらか?俺が来るのがわかっていてパジャマなのか?」

なんか怒っている。

「おまえ、俺の邪魔をすんなよ。」

なんだ?少しばかり大きくなった小鬼じゃないか。

さんざん不気味そうな演出をしていたのに正体を見れば枯れ尾花か?

「おい、なんか失礼な事考えただろう。」

「なんじゃ?竒牙羅(キガラ)のハナタレじゃったんか?」

「ゲっ、童羅(ドーラ)おまえこいつの式鬼やってんのか?」

「そんなことも分からんとあきらを敵に回そうとしてんのか?お笑いじゃ。で、ハナタレが何しに来た。」

ダイニングではみんな無関心に朝ごはんを食べている。

「アマビエあんた納豆に醤油かけ過ぎよ。高血圧になるわよ。」
ありさに醤油の瓶を取り上げられている。

アマビエは高血圧にはならないと思う。

「お、お、俺達の邪魔をすんなって。」

「フンっ、どうせ姉の竒阿羅(キアラ)にパシらされたんじゃろうよ。」

ドーラ的にはまったく相手にならないといった感じだ。

「なに!舐めんなよ。」

竒牙羅(キガラ)がドーラに掴みかかろうとした瞬間にドーラの背後からごっつい鬼の手が現れて竒牙羅(キガラ)を掴む。

「ばばあ、はなせ。」

竒牙羅(キガラ)がもがくが振り解くことは出来ない。

「ばばあとぬかしおったな容赦せんぞ。」

「キガラをはなせ、ドーラ。」

「なんじゃ竒阿羅(キアラ)おったんか?弟の躾けがなっておらんぞ。」

ドーラはポイっとキガラを玄関の外に投げる。

「わざわざ出向いて来て邪魔をするなじゃと?」

ドーラが腰に手を当ててない胸を張って威張っている。

「調子に乗っているんじゃないか?」

「だいたいお前達が何をしようとわしには関心がないのじゃ。」

「お前達こそあきらに手出しをせずにさっさと往ね。」

鬼や妖が業の深い魂をいくら喰らおうがそれはあきらには関心がない。

それは鬼や妖の仕事だし、人が食事をすることと何も変わらない。

だいたい普通は見えも聞こえもしないものに恨みも怒りもない。


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