第79話  世界は不思議でいっぱい

文字数 1,112文字

なんだか朝から頭がぼーっとする。

あんまり学校に行きたくないのに耳元で「学校行け学校行け学校行け」って小さな声がする。

超自然現象研究部ってなんだろう。

どこからか「入部入部入部入部」って囁かれている。

どこにいても、耳をふさいでもずっと聞こえる。

頭がおかしくなったんだろうか。

本棚に手を伸ばすと怪奇現象についての本を掴んでしまうし、スマホを見るといつの間にかオカルトについて検索をしている。

なんとテレビを見ていたら勝手にチャンネルがホラー特集の番組に変わってしまった。

おかしなことが起こりすぎる。

高校1年生の小松は不思議そうにくびをかしげている。

元々、荒俣はオカルト系のものは好きだし民俗学や伝承などにも関心を持っている。

だから超自然現象研究部に対してそんなに強い抵抗感はない。

人と関わるのが苦手なだけだ。

「キミにも霊が見える!!」

「新しい世界への旅立ち。超自然現象研究部」

「超自然現象研究部に入ろう
!」

なんだかこのところ学校内でこんなポスターばかり見かける。

小松はふらふらと超自然現象研究部の部室に入ってしまう。

「いらっしゃいまっせー。1年3組の小松君だね。超自然現象研究部にようこそー。」

部長がすかさず入部届をデスクのうえにだす。

なんだかこの部室に入ってから妙なざわざわ感を強く感じる。

耳元では「入部入部入部入部。」「名前書け書け書け書け書け書け書け。」ってずっと囁き声がする。

「すっごいな、部員が5人も増えたよ。」

部長は関心している。

「うーむ、これってどうなのか先生的には微妙だが?まあ俺が頼んだことだし結果オーライって事でいいか。」

幸田先生は善人だからね。

「小松君これ。」

そう言って霊験符を渡す。

小松は符を受け取ると、ビクッと硬直する。

「こ、これは、いったい......。」

目の前にいきなり女の人が現れた。
決して同級生の女の子が自分に向けることはないであろう笑顔の....幽霊だ。

「えへへー、ごめんなさいねー。入部してくれてありがとう。」

ああ、これはずっと耳元で聞こえていた囁き声だ。

この護符って本物なんだ。
他にも額に角が生えた子供やしっぽが二本ある猫、多分すねこすりや家鳴りなどの妖怪達が見える。

護符を渡してくれたのは3年の和泉先輩。
それからオカルトマニアで有名な蘆屋先輩。

「悪かったな、どうしても廃部にする訳にいかなかったんで協力してもらう事にしたんだ。」

「ちょっとやり方は悪どかったけどな。」

和泉先輩が笑っている。

だけど僕にとっては新しい扉が開いたような新鮮な気持ち。

こんな不思議な事が日常の中にあったなんて。

こんな不思議な事ができてしまうなんて。

僕は好奇心でいっぱいになって嬉しくなった。

世界は不思議でいっぱいだ。
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