第71話 播磨智徳の依頼1-9 合流
文字数 1,175文字
「あの人達じゃないの?あの道服を着た3人組。」
「ご飯を食べているわ。わたし達も食事にしましょうよ。」
ユーコってこんなにマイペースだったっけ。
いや、あきらや俺たちが無頓着なだけだと思う。
それにしても冥界ってもっと荒漠として、なんにもなくておどろおどろしい所だと思っていた。
少し都市部から離れた公共施設周辺の街並みといった感じ。
三途の川が護岸されている。
川のこちら側には大きな神社の社のような建物があってそこから対岸に向けて橋がかかっている。
対岸は遠く水平線の向こうなのだろう見ることはできない。
橋の片側を社から射出されるかのように超高速で浄仏間近の魂が渡って行く。
花火を連発で水平に上げているみたいだ。
膨大な量の亡くなる人を速やかに浄仏するためにはアカシックレコードを活用してAIによる処理をしないと追いつかないのだろう。
もっとも冥界というのは現世の時間経過よりも遥かに遅く進んでいるらしいので時間はいくらでもあるといったところ。
ドーラの説明を聞きながら急にユーコが焦り始める。
「もう半日は冥界に居るってことは現世ではもう100年ぐらい経っているって事なの?」
「そうじゃ、だからここから出て行く時は時間軸を逆行してここに来た時間の現世に戻るのじゃ。」
「そんな事出来るの?」
普通に戻ったら浦島太郎のようになってしまう。
「それで出雲口の方から出るんじゃ。」
イザナギとイザナミの話しを知っているだろう?
「あー。あれあれ。迎えに来たのはあの子供達じゃないか?何やら強い力を感じるだろう。」
蔡さんがどんぶりをテーブルに置いて施設の入り口でキョロキョロしているあきら達を指差す。
「子供ながらに陰陽師なのね。」
「いや、林さんあの子達の経験値は1000年を超えているよ。おそらく転生を繰り返して今世まで繋いできたのだろう。」
「仙人でもなければ死は避けられない。我々方術士でも錬丹術でいくらかの寿命の延長を図るぐらいがいいところだ。極めるべき術や知識の多さに対して人の寿命の短さの歯痒い事だ。」
「李さんそんなちびっこなのに本当は一体どれだけ生きて来たのよ。」
「内緒。」
現世と往来が可能なのは冥界と言われる三途の川の橋のこちら側からだけで川向こうの彼岸にまで行ってしまうと人間には戻ってくる事は出来ない。
人間には.....仏様とか神様になってしまえば話は別って事。
合流したあきら達はヤーマの案内で彼岸とは反対側にある山の中腹から続く黄泉比良坂(よもつひらさか)をたどる。
坂と言うが実際は真っ暗な洞窟だ。
歩いているつもりだが体が歩く歩数や力加減とは別に流されていると言う感覚が強い。徐々に前方と思われる方向が明るくなる。
ふっと気が遠くなり、気がつくと細いしめ縄がかかった2本の石の柱の前に立っていた。
振り帰って見ても既に通ってきた洞窟らしきものは見られない。
一方通行って事?