第80話  おまけ 新入部員 小松和仁(こまつかずひと)

文字数 1,009文字

第79話 おまけ 新入部員 小松和仁(こまつかずひと)

「起きた方がいいと思うわ。」

そんな声に瞼を開くと目の前にでっかい目が二つ。

「うわあ、近い、近いよユミコさん!」

幽霊には距離感って言うものがないんだろうか?

寝ていた僕の上に乗っかっているつもりなんだろうけど下半身のかなりの部分が僕の体と重なってしまっている。

物理的な重量や感触はないもののビジュアル的にはちょっとアレな感じ。

「カズヒトなんか大きくなって来たよ。」

「いやー、そ、それは寝起きだからだよ、うん。」

「遅刻するわよ。」

あれ以来この幽霊ずっと僕について来る。

「これって憑かれているって事?」って聞くとそう言うことではないらしい。

「おう、なんだい。朝から美人の幽霊連れで登校かい?いい気なもんだねえ。」

野良鬼のにいちゃんが声を掛けてくるがぜんぜんいい気ではない。
幽霊だし。

あれから道を歩いていても、どこにいても名前もわからないような小さな妖怪や野良鬼、地縛霊の類いが見える。

むしろ人間より多いぐらいだ。

普通の人間には見えないので避けることも無く近づいていくのだけれどぶつかることはない。

レイヤーを重ねたように相互に干渉することがないようだ。

そして見える者は避けるようにする。

まるで同じレイヤー上にコピペされたように鬼や妖に触れられるようになる。

霊には実体がないので触れることは無理みたいだ。

写真には時々まぐれの様に写る事もある。

念写とか心霊写真って言う奴。

あまり鮮明にって言うわけではない。


「うわあ、これ私なの?上手ねえ。実物よりきれいに描いてくれてない?」

小松は赤い顔をして描いていた絵を手で覆う。

「か、描いている途中で見ちゃダメだよ。」

「いいじゃないの、これは家鳴りね。可愛く描けているわ。でもこれだと可愛すぎて妖怪の絵だってわからないかも。」

従来の妖怪絵図などは妖怪や幽霊が怖い事前提で描かれているからじゃないかな?

小松にとってはどれも優しく、可愛く、時には滑稽な者達なので怖くはない。

「小松君、なんだかポ◯モン図鑑つくっているみたい。」

同級生の女子が話しかける。

今までそんな事ぜんぜんなかったのに。

ユミコさんがピースサインをしている。

小松はコミュ症で女の子となんてぜんぜん口もきけなかったのに普通に女子と会話する。

多分幽霊ではあるけれどユミコさんと会話をしていたので免疫がついたのかもしれない。

小松和仁はこの後「現代妖霊鬼総図鑑」を編纂することになる。





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