第62話  悪霊狩り5  浄仏

文字数 1,030文字

黒いゆらめきはなくなり半分欠けた球体の様な白い塊が地面から1mぐらいの所に浮かんでいる。

「あれが魄(はく)じゃ。だいぶとアクが抜けたのう。」

ドーラが言う。

「ご苦労さんだったね。」

そう言ってポンっと禍邪(かじゃ)が現れたかと思うと魄を掴んでガリガリかじり始めた。

「独り占めさせるなー。」

そう言ってどこから湧いてきたのかたくさんの野良鬼達、それから竒牙羅(キガラ)と竒阿羅(キアラ)が禍邪(かじゃ)に飛びかかる。

感傷も何もあったもんじゃない。

「あーあ、やっぱりこうなるんだ。」

播磨智徳(はりま とものり)が呆然とその様子を見る。

「僕も勉強はしたからわかっていたけどねー。」

「だが、じいちゃんの魂はすでに冥界に行っておる、まあそのうち浄仏するじゃろう。」



「人間なんてかまうなって言われると余計に首を突っ込んで来るもんさ。」

禍邪(カジャ)は会長室のソファの上で半分ほどになった魄の塊をかじりながら言う。

「言っとくけど俺たちはお前の両親が刺されたことも、じいさんが悪霊化した事にも一切手出ししてないからな。」

「分かるよ、手出ししないんじゃなくて出来ないんだって。」

播磨智徳(はりま とものり)は意外と落ち着いている。

仙化するための修行や霊力を持つ中で感情の起伏のような物が若干削ぎ落とされたのかも知れない。

人間に見えないもの,存在がわからないものが人間に直接影響を与えることは出来ない。

「カジャはまだ現世にいるのかい?」

アウラが話しかける。

「冥界におれの居場所なんかないからな。」

「それに現世にはまだまだ悪霊や怨霊がいるからな。」

「お前たちにもまだまだ悪霊のアク抜きの手伝いをしてもらうぜ。あーははは。」

ボコっとドーラにゲンコツをくらう。

「図にのるでないわ。いつもそんなにうまくはこぶものでも無かろう。」

「うるさいドーラ。お前はいつも年寄りくさい説教ばかりだ。」

そう言って涙目になったカジャはポンっと不可視化する。

不可視化をされると霊力をもっている俺たちにも見えなくなる。

ある程度力のある鬼は普通にこの不可視化を使う。

「トモノリ兄さん、大丈夫か?」

ユキオが声をかける。

まあ、俺たちよりずっと大人だし大きなお世話かな?

「いや、助かったよ。ありがとう。」

播磨智徳(はりま とものり)はこれから社長として播磨商事の立て直しをするために「崑崙仙道大学」を長期休学することになった。

もっともこの学校は仙骨さえあればいつから行っても全く問題はない。

仙人には時間は有り余るほどあるし。
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