第61話  悪霊狩り4 善悪の彼岸

文字数 1,089文字


「トモノリー、おじいちゃんは退屈じゃー。封印を解いておくれー。」

「うわー、じいちゃんもう真っ黒けじゃん。封印もそろそろまずいよ。これ払えるかな?」

あきらが首を傾げている。

「ユキオと2人がかりならなんとかなるのじゃ。わしも少し霊力をまわしてやろう。」

2人はスマホを出して護符を画面に表示させる。
描かれた模様が光を発する。

「青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女」

「臨・兵・闘・者・皆・陣・列・在・前」

ドーマンセーマンの封印がじいちゃんを取り囲む。

「悪霊清浄急急如律令」

2人が声を合わせて唱える。

「尊いわ。」

そばでユーコが何か違う意味でワクワクしているみたいだ。

BLではないからな。

「トモノリー。なんじゃー。こいつらー。やめさせてくれー。浄化されてしまうー。昇天してしまうー。」

「なんか厚かましいこと言ってるよー。じいちゃんいろいろやりすぎたから昇天は無理。地獄行きだよ。」

アウラが笑いころげている。

「わしの何が悪いのじゃ。わしは子を殺された可哀想な親じゃぞ。」

「子供を殺されて怨みを持って何が悪い。わしは子供達が不自由なく暮らしていけるようにと必死に
働いてこの会社をここまでにしたのじゃー。」

黒い炎の様なものがごうごうと燃え盛るようで何言っているのか良く聞こえないがたぶんなんか言い訳しているんだろう。

「こらこら、年寄りの話しぐらいは聞いたらどうじゃ。」

「私達、護符をたくさんプリントしてきたのよ。これ使える?」

ユーコとセツヤがポーチから護符の束を出す。

「おーっ、準備がいいじゃん。使える使えるよー。充分だよー。」

「だーかーらー、おまえ達聞けよー。」

じいちゃん護符の束を見てあせりだした。

あきら達はじいちゃんの話しに取り合わず周りに護符を並べ始める。

「じいちゃん、これはね、誰が悪いとか善悪とか正義みたいなものとかは関係ないんだ。他にはどうしようもないんだよ。」

「じいちゃんは悪霊になってしまった。それだけが問題なんだよ。悪霊は現世にいちゃダメなんだ。」

「じゃが、わしが悪霊になったのはわしのせいなのか?わしはどうすればよかったのじゃ。」

「ごめんよ。そう言う事じゃないんだ。」

あきらはこんな時に感情を押し殺して行動する。
感情に押し流されて救えるものは何もないから。

「じゃあもう一回。」

「悪霊清浄急急如律令」

あきらとユキオが声を合わせる。

ユーコがにまあと頬を緩める。

護符がじいちゃんの周りを回転する。

少しずつその輪をすぼめて黒い炎を閉じ込めていく。

おじいちゃんはもう何も語らない。

トモノリはポタポタと涙を落とす。
孫にだけはあまあまだったおじいちゃんの思い出が去来する。
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