第42話  羅烏那鬼(ラウナキ)神社3

文字数 949文字

「ヤスタダ、アイス買って来たの?チョコレートでコーティングされたヤツだよ。」

作務衣を来た青年がエコバッグをラウナに差し出す。

「この宮司、ラウナが見えるの?」

「ヤスタダは少しだけ霊感があって私だけは見えるみたい。」

ラウナはエコバッグの中から6本入りのアイスを出してあきらとユキオ、ドーラとアウラに1本づつ渡して、残った2本の内1本を宮司に渡した。

「このアイスが一番好きなんだ。」

ラウナが笑っているのを見て宮司は嬉しそうにしていた。

宮司は賀茂安唯(かもやすただ)
代々この神社に勤めて来たの賀茂一族の末裔。

先祖の1人に安倍晴明の師でもある賀茂忠行がいる。

確か朱慈鬼(シュジキ) 神社の神主も賀茂だった。

多分、青海鬼(おうみき)大社もそうなのかも?

陰陽師って土御門家じゃなかったっけ?

「ラウナ、宮司さんをパシリにしてるんだ。」

「だって私がここを離れる訳にいかないじゃない。」

(本当は分体を作ればいいんだけどね。)

羅烏那鬼(ラウナキ)神社を出ようとすると小鬼や小妖が鳥居の前に集まっている。

神社を包んでいる結界のせいで入って来れないのだろう。

あきらとユキオが出ると集まって来て口々に何かを言っている。

「泉の広場の真ん中の噴水が壊れたみたいになって「妖しい気」が吹き出しているらしい。

小妖ぐらいだとその気に触れると消されてしまうらしい。

地下街の5つの通りの真ん中にある「泉の広場」には噴水やベンチがあり、地下の公園風になっている。

人間は特別異常を感じている様子はないのだけれど、あきらやユキオには噴水の真ん中から吹き出している黒々と揺らぐ煙のようなものが見える。

周囲にはその黒い煙のようなものに触れてしまったのだろう。

床に消えかかった小さな妖がたくさん転がっている。

「冥界の扉の力が現れている。扉が一層開いてしまったようじゃな。」

「今は引きの刻じゃから弱い妖や霊だと冥界に引き込まれてしまうのじゃ。」

「日の入り頃から満ちの刻になるので下手をすると面倒くさいヤツが出て来るかもしれんのう。」

女子高生モードのドーラが腕組みをして言う。


この場では噴水の周囲に結界を張って小妖が近づかないようにすることなど気休め程度の事しか出来ない。

あきら達は残りの刹弥鬼(セツヤキ)神社と阿毘邏鬼(アビラキ)大社に向かう事にする。













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