第51話   阿毘邏鬼(アビラキ)大社2

文字数 1,436文字

地下街の階段を上がると阿毘邏鬼(アビラキ)大社の参道がある。

5つの神社の中では一番大きいし学業や安産、縁結びなど御利益があるという事で参拝者が多い。

だけど今は参拝者以上にさまざまな妖やもののけ、鬼などが溢れている。
「なんだ、ようやくお出ましか?」

ちっちゃいハムスターみたいな妖?小鬼?がいる。

「今、ちっちゃいとか思ってなかったか?」

禍邪(カジャ)が凄んで見せるがぜんぜんかわいい。

社殿の奥の社からどんどん鬼や妖が溢れて来ている。

参拝している人間には少し寒気がするぐらいにしか感じられないようだ。

別に何も気がつかないんだったら放置していてもいっしょじゃないのか?

あきらは思う。

異なるものが見え感じられるものが気持ち悪いだとか胡散臭いとか言われて疎外されて来た。

そんな人間をなぜ守る?

「そうだ、おまえの知った事じゃないんだ。」

カジャがあきらのこころを読んだかの様に言う。

あきらは鬼や妖達を掻き分けるようにして社に近づく。

カジャはあまりこの件に乗り気ではないあきらの後を嬉しそうに歩く。

ちょっと怯んだ様子で立っている鬼がいる。

「なぜおまえが裏切る?なぜ封印のお札を剥がしたんだ。あの時ちゃんと守るからって約束したんじゃないのかアビラ。」

アビラはビクッとしてあきらを見る。

「だ、だって、だってハルアキまた来るって言ってたのに全然来ないから。」

アビラは両手を握り締めてぶるぶる震えている。

「1000年も待ったんだよ。もう来ないんだったら封印なんかどうでもいいじゃないか。」

「それでカジャの話しにのったのか。」

あきらがスタスタとアビラに近づいて掴みかかる。

封じられる!

とっさにアビラが頭を抱えて座り込もうとする。

「ごめんなさい。ごめんなさい。」

アビラが泣き叫ぶ。

あきらがアビラの肩を抱く。

「すまないアビラ、寂しかったね。思いのほか覚醒に時間がかかってしまった。」

「晴明!覚醒したのか?」

ドーラが叫ぶ。

「どうやらそのようだねヤーマ。」

「わしをヤーマと呼ぶのか?おまえも覚醒したのか道満。」

「どうやら晴明の覚醒とシンクロする様になっていたみたいだ。」

霊気が段違いに強くなった。

その力を受けてアビラやドーラ、アウラやありさ達式鬼や式神の力が増して行く。

だが、それでも綻びかけた封印をこじ開ける力は強い。

5つの神社を頂点として上空に描かれる五芒星の封印に大きな負荷がかかる。

あきらとユキオは五芒星の上に網の目状の九印の封をかける。

すでに封印に負荷をかけているのは鬼や妖ではない。

十二神将だ。

十二神将相手に十二天将は使えないのはすでに1000年前にわかっていた。

だからありさ以外には式鬼(しき)を使っているのだ。

役割を与えていた5体の鬼にさらに4体の形代を出して九鬼将を構成する。

「ちょっと足りなくないか?」

ドーラが言う。

「そこはおまえとアウラ、それから野良鬼達に手伝ってもらおうかな?」

十二神将達は今のところは個別に動かないで封印を一気に破壊するつもりの様だ。

彼らの目的は封印を打ち破ることだけだからとてもシンプルな動きをする。

弥勒システム(ミスラ)自体の力もある。

結界は大きくしなって切れかかっている。

「今回はかなり分が悪いな。」

ユキオが言う。

確かに分が悪い。

平安の頃には沢山の陰陽師がいて力を借りる事ができたし、陰陽師の力を信じる人達がたくさんいたから。

現代では陰陽師と言っても眉唾物で胡散臭いとしか思っていない人達が大半だ。

なんかモチベーションが上がらないなー。

あきらがぼやいている。
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