第33話   青海鬼(おうみき)大社1

文字数 1,146文字

食品や雑貨、衣料品店などが雑多に並ぶ「虹の通り」は地下街の中央に当たる泉の広場から北東の方向に伸びている。

地下鉄「青海駅」につながるこの通りはこの地下街の中では人通りが多い。

地上よりも明るいのではないかと錯覚させるほどLEDを多用した照明は地下街を以前より華やかに見せる。

ひと月程前の照明器具の破損事故後に改修したのだ。

蛍光灯やハロゲン球に比べて熱の低いこのLED照明は鬼や妖にとっては居心地がいいようだ。

まるで人間の生活とは同じ空間にレイヤーを分けたように存在する鬼や妖、そして地縛霊など。

そこにいるのだけれど人間には触れることも見る事もできない。

あきらからは何も問題なく共存しているように見える。

足元にすねこすりがまとわりついてくる。

地下鉄「青海駅」の手前⑦番階段を上がるといろいろなブランドのショップが入った雑居ビルが建っている。

ビルの裏手に回ると公園があり、隣接するように青海鬼(おうみき)大社がある。

「大社って言うからって大きいわけじゃないんだ。」

あきらが言うとユキオが答える。
昨日ネットで調べたみたいだ。

「元々大社って言うのは出雲大社の事で、その後諏訪大社とか春日大社とか大社が増えたみたいだけどここが何故大社なのかはわからない。」

「ここも元はたくさんの鬼達がいて荒れた土地だった。」

「流れの道士が鬼を封じてその守りとして特に力のあった鬼のオウミを祀った」

「と言うのがこの神社の起源らしい。」

「大社って言うようになったのは大正になってかららしい。」

「宮司がお金持ちで国に対して力があったとか?」

あきらが言うと。

「こらこら、失礼な事言うなよ、そうじゃなくて、大正時代のえらい学者が青海(オウミ)って言うのは出雲由来の鬼だったって言いだして、出雲大社の系列扱いで呼び名が変わったんだよ。」

急に現れて話しかけて来る

スーツを着てシュッとした男前のお兄さんだけど額に角がある。

「鬼じゃん。」

ユキオがジーッと見ている。

「この人○塚の男役トップスターみたいだよ。」

どおりで兄ちゃんにしてはすっきりし過ぎているわけだ。

男装の麗人って感じ。

こんなきれいな兄ちゃんはそうそういるわけがない。

「うんうん、いい子達じゃないか。」

あきら達の反応に青海(オウミ)は満足そうだ。

「相変わらずじゃの。」

「あら、ドーラちゃんじゃないの。あなたも相変わらずちっちゃいのね。ふーんアウラも一緒なのね。」

なんだか鬼のイメージがおかしくなって来る。

鬼っていったらもじゃもじゃ頭に角が生えた筋骨隆々のいかついおっちゃんだったはず。

そんなの1人もいないじゃないか。

まあ誰にも見えないんだから勝手に怖そうなものを想像しちゃったんだろうな。

それでも角やトラ皮だとか一致する部分もあるからまったく見えなかったと言うわけではないのか?












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