第49話  式鬼セツヤ

文字数 1,096文字

「お昼まだかなー。」

「お腹すいたー。」

「つまんない。」

机の上に黒いキイウイみたいな鳥やセキセイインコがいて膝の上の猫が顔を出している。

学校でこれはダメなんじゃないか?

ユキオ、せめてキイウイぐらいは面倒みてくれー。

こいつらは可視化はしていないので先生や他の生徒に見えていないはず。

ただ前の席の塚田優子が完全に後ろを向いてこいつらを見ている。

多分、見えている。

それにしても授業中に真後ろを向いているってのはあかんのではないか?

「ねえねえ、その子達もあきら君の式神なの?」

「やっぱり、見えてたのか。」

「おまえ、知らんかったのか?この娘もなにやら霊感の様なものを持っておるぞ。」

「ただしおまえやユキオがそばにいる時限定じゃが。」

「多分この娘のなにかがお前達にシンクロするんじゃろう。」

それじゃあ、せめて結界ぐらいは自分で張れないと危ないんじゃないかな?

「塚田ー。和泉にちょっかい出すのは授業の後にしてくれー。真後ろ向いているって露骨すぎて先生は悲しい。」

怒られた。

パタパタと刹弥(セツヤ)が教室内を走って来た。

祀られていた刹弥鬼(セツヤキ)神社が廃神社になって社も壊されてしまったので今はあきらの家に住んでいる。

元々は力のある護鬼なのだけれど今は弱ってしまっている。

「どうして学校に来たんだ?ありさはどうした?」

セツヤが廊下側の窓を指差す。

窓にありさが形代になって張り付いている。

小鬼や小妖達も遊びに出て行っちゃったんで退屈になって、ありさに連れて来てもらったという事だ。

学校に来ても暇だと思うけどな。

午前の授業が終わると塚田優子が目をピカピカさせてセツヤを見ている。

「この子かわいいわね。この子も式なの?」

「ユーコ。この子見えるんか。」

ユキオが聞く。

塚田優子がうなずくの見てユキオがスマホを出して何か操作している。

塚田優子のスマホがブルブルと振動する。

一応マナーモードにはしているんだ。

「何?これ。」

「結界のお札、何か怖さを感じたら画面に表示するんだ。」

「ふーん、それで効いちゃうんだ。」

塚田優子はスマホの画面を見て変に感心している。

「あきらが使ってたからちゃんと効くよ。効いているところユーコも見ただろ。」

あきらが何か思いついた様にセツヤを抱え上げて言う。

「セツヤ、塚田の式鬼になりなよ。刹弥鬼(セツヤキ)神社の社が直るめどが立つまででいいんだ。」

「そうじゃな、そうすればセツヤも依代ができて少しは力が戻るし塚田のお嬢ちゃんも安全じゃ。」

ドーラも賛成の様だ。
なんかやっかい払いとか思ってないか?

まあすでにあきらから塚田がセツヤを受け取って「かわいい」とか言っているしセツヤも嬉しそうだからいいか。
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