第28話  姑獲鳥捕獲作戦1

文字数 845文字

「ここはまずいでしょう。」

「じゃが、ここには園児達の魂跡がいっぱいあって妖を引き寄せるのには都合がいいんじゃが?ダメか?」

夜の幼稚園の園庭でドーラが言う。

「だいたい、関係者以外は入っちゃダメだと思うんだけれど。」

隠蔽術で姿を消していなかったらすぐに警察に通報されているだろう。

「まあ、とりあえずやってみるか。」

あきらがお札の束の包みを開く。

この包みには封印紋が書かれていて擬魂符の効力を抑え込んでいた。

擬魂符は鬼や妖からは人の魂のように見えるのでお祓いなどの時に囮として使われる。

今回、擬魂符には汚れや業のようなものは付加していないので対象としては姑獲鳥(うぶめ)限定になる。

あきらは先に地面に大きな五芒星を描いてその中央に5枚の擬魂符を並べる。

擬魂符を並べると描いた五芒星の一部を消して結界を開く。

しばらくすると擬魂符が1枚、また1枚と消えて行く。

「かかったみたいだね。」

そう言ってあきらは消してあった五芒星の一部を書き込んで結界を閉じる。

「あきゃっ。な、なにすんねん。食事中に。」

五芒星の中央に黒いゴスロリ調の服を着たお姉ちゃんが現れる。

「お姉ちゃん姑獲鳥なの?」

お姉ちゃんは擬魂符を咥えたまま顔を上げる。ちょっと怒っている。

「お話しは食べてからにして欲しいんだけれど?」

「でもそれお札だよ。」

「いいのよ、これ私好みの味になっているから。」

「私って欲やら業やらでゴテゴテした魂って好きじゃないの。」

「このお札あんたが作ったの?墨汁や念とかの雑味がないから結構好きよ。」

「うぶめ?ああ、『うぶめ』だとか『こかくちょう』とか呼ばれる事もあるかな?」

「鬼車(きしゃ)とか女岐(じょき)とも。」

「人は勝手にいろいろ名前をつけてくれるけど。でもね私は婀禹羅(アウラ)よ。」

「アウラは冥界に帰らんのか?」

「あら?ドーラったら式鬼になったの?笑っちゃうわね。あんたでも気に入った人間がいるもんなのね。」

「うるさいのじゃ。いらんこと言わんでもいいのじゃ。」

「ドーラ、顔が赤いよ。」

「うるさい、ありさ。」

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