第60話  悪霊狩り3 調査

文字数 1,144文字

「やっぱりあのビルが変だよ。」

ビジネス街の一角を占める総合商社のビルを指差して野良鬼達が言う。

連続変死事件の被害者の何人かは元々このビルの会社に所属していたらしい。
何故か事件の後警察が調べる頃には違う会社の社員になっていたのだ。

「誰かがあの会社と事件の関連を隠しているってこと?」

ユキオが窓の外のビルを見上げる。

「そうじゃのう、それは会社の中核におるものでないとできんじゃろう。しかもあのビルから流れ出る霊気は只事ではない。」

ドーラがあきらのハンバーガーセットのポテトをパクパク食べながら言う。

ドーラの隙を伺って野良の小鬼がポテトを取ろうしている。

ユーコが笑いながら小鬼を抱え上げて自分のポテトを食べさせている。

「只者ではない誰かが悪霊を押さえ込んでいる。」

セツヤは少し霊力を取り戻したのか元気になって来たようだ。

「でも、どうする?殴り込み?」

ユキオが言うけどそんなことできるわけもない。

従業員や普通の人には悪霊なんか見えないし、多分会社で何が起こっているのか全然わかっていないと思う。

「大丈夫、悪霊(おじいちゃん)の所には僕が案内するから浄仏の手助けをして欲しいんだ。」

チューっとストローでコーラを飲むと20歳ぐらいの兄さんが顔を上げて言う。

「えーっ、誰?。」

「いつからそこに?」

あきらとユキオが驚いて聞く。

男の子同士で声が揃っちゃっているのがあらぬ疑いを....。

なぜかユーコが嬉しそうな顔をしている。

「僕はあの会社の社長、播磨智徳(はりま とものり)だよ。」

「なんか不思議な力を持っているよねー?」

「僕は仙人見習いなんだよ。両親が亡くなったって聞いて休学して帰ってきたんだよ。」

「そうしたら両親や会社役員達は悪霊化しそうだし、おじいちゃんはすでに大悪霊になって暴れ狂っているしでびっくりさ。」

なんだか都合よく解決策が向こうからやってきた。

「最近小鬼たちが会社の中をウロウロするようになったのでお菓子を配ったら君たちのことをいろいろ教えてくれたんだ。」

「お菓子なー。しょうがないなー。」

「えへへー。」

竒牙羅(キガラ)と竒阿羅(キアラ)がてれてる。

いや、そこはてれるところじゃないから。

まあ怪我の功名って事で役には立ってくれてるからいいか。

この播磨智徳(はりま とものり)って言う兄さんはなんか見覚えがある。

「あきらー。この兄さんミチナガに似てないか?」

「お金持ってそうな、変に善人っぽいところとか、カモっぽいところ?」

「君たちひどいな、それ、本人を前にして言う事かな?」

「この兄さん好きだよ俺。」

「そりゃ竒牙羅(キガラ)そんだけハンバーガーやポテトを買ってもらったら好きになるだろうよ。」

小鬼達はいつの間にかたくさんのポテトやナゲットを買ってもらってご機嫌だ。

さすがは社長、お金持ち。
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