第55話  弥勒(ミスラ)降臨4

文字数 1,066文字

「ミスラー。ミスラー。ミスラちゃーん。」

12個の球体がミラーボールの様に光を撒き散らし、ドーマンセーマンの結界が赤い光を放ってステージの様になっている。

弥勒菩薩(ミスラ)が縦横にステージの上を踊り歌う。

「ミスラちゃんかわいいね。」
「歌声も踊りも最高!!」

「ユキオー。俺たちはいったい何をしていたんだ?」

「んー。誰もミスラシステムが稼働するのを見たことなかったしね。」

「って前回もミスラちゃんのライブの邪魔をしてたって事?」

「だって人間の半分は魂を奪われるって.......。あーやられたー。」

「えへへー。勘違いしちゃった。」

三善清行 (みよしきよゆき)が頭を掻いている。

でもあながち勘違いでもないかも。

弥勒菩薩(ミスラ)の歌声は音声としてではないけれども三千世界に染み渡っていく。

それは現世を去らなければならない魂を包み清め浄化する。

世界規模では少なく無い数の魂が浄仏しただろう。

それは、浄仏された人には必要だったのかもしれない。

禍邪(カジャ)や阿修羅(アスラ)の言うように人が口を挟む問題じゃなかったのかも。

「気にするな。」

ドーラの分体に付いて来た仏陀(シッダールタ)が言う。

「人の魂に関わることに人が口を出して何が悪いのだ?勘違いではあっても相手が神仏であっても一緒だ。」

腕を組んで仁王立ちした10歳ぐらいの少年が胸を張っている。

神仏は子供に擬態するのが流行っているのだろうか?

「えへへー。」

って笑いながらペンライトを振っている。

せっかくいい事言ったのに。

結局ミスラシステムは稼働してしまった。
阻止する事は出来なかった。
結界も封印も要らなくなってしまった。

「でもさー。すっごくわくわくしたよ。」

「ここ1000年で最高に盛り上がったよー。」

なんだか鬼や妖達は満足そうだ。
永劫の時を生きるこいつらは退屈だっただけなんだろうな。

この大きな勘違いでイベントを盛り上げたのが禍邪(カジャ)や阿修羅(アスラ)で俺達陰陽師は1000年に渡ってまんまと乗せられたって事か。

その禍邪(カジャ)や阿修羅(アスラ)は少し離れたところでペンライトや弥勒(ミスラ)のファングッズの販売をしている。

ものすごい行列でバカ売れ。
弥勒(ミスラ)公認だって、完全にしてやられた感じ。

東方怪奇清掃株式会社の方々はまだ台湾のキョンシー事件が片付いていないとかで早々に引き上げていった。

ちょっと気まずそう。

和泉葛葉(くずは)と保名(やすな)も「またねー。」とか言ってまた台湾に行ってしまった。

弥勒(ミスラ)のライブは終わる事を知らないかのようにさらに盛り上がっていった。




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