第36話   教室1

文字数 985文字

夏休みも終わっての登校日。
あきらは部活はしていないので久しぶりの学校だ。

教室に入るとユキオが手招きしている。

真美や優子、紀子は元気を取り戻したようで何を話題にしているのかはわからないけどきゃあきゃあ笑いあっている。

久しぶりに会うのだろう生徒たちはそれぞれ気のあったもの同士で固まって話しをしている。

「あきらとは毎日のようにあっていたから新鮮味はないな。」

「お前が毎日アウラと一緒に押しかけて来たんだろうが。」

ドーラがカバンから出て来る。

「まだまだ暑いのう。」

そりゃそんなところに入っていたら暑いだろう。

「ユキオ、アウラは置いて来たのか?」

ユキオは向かい側の校舎の屋上を指差す。

そこには真っ黒な鳥が立っている。
体の割に細く長い足。

そして細くて長く鋭利な嘴。

不吉さを纏ったようなぽっかりと空間に穴が開いているような存在。

「あの不気味さも演出なのか?」

「おう、あやつなかなかやるではないか。」

ふっと屋上の鳥が消える。

「どうどーう?不気味だった?いけてた?」

黒いひよこがユキオの机の上に現れる。

アウラだ。

うーん。いい演出だったけどなー。

ドーラが猫形態になってひよこを背に乗せている。

「どーだかわいいだろ。」

と言っているようにニヤッと笑うと不可視化して行った。

どこかに行ったわけではない。見えないだけでずっとそばで警戒しているのだ。

実際あきらやユキオ以外の人間には見えないだけで鬼や妖、霊などはそこらじゅうにいるのだから。
始業のチャイムがなると教師が部屋に入ってくる。

ありゃ、先生えらいもの連れて来ちゃったよ。

先生の隣には真っ黒な人形(ひとがた)がある。

禍々しい存在感が放たれている。

先生の顔は青白く目の下にクマが出来ている。

「憑かれているって感じ。」

先生の魂が抜けそうだ。

「あいつ生徒のイジメに加担していたのがSNSに暴露されたんだよ。」

竒牙羅(キガラ)がセキセイインコの姿であきらの机の上に現れる。

「俺達が他の生徒を操って暴露してやったんだ。あんなのって自業自得だろ。もうじき魂が抜けてあの黒い魄(はく)だけになる。」

「魄だけになった人間は普通は死んでしまうんだけど業にまみれた魄は狂鬼や奇妖になって人に害をなす存在になるんだよ。そして業にまみれた魄は最高に美味しいんだ。」

インコがペラペラしゃべっている。

「俺達はイジメにあっていた生徒を救った。お前はあの教師が救えるのか?」
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