第50話   阿毘邏鬼(アビラキ)大社1

文字数 953文字

地下街の中央の泉の広場から北西の方向に伸びているのはこの地下街でも最も古くからある通りだ。

書店や古書店、CD店、楽器店,画材店など趣味に関する店舗が多い。

純喫茶だとか立ち飲みの居酒屋などもある「ホビーストリート」と名はあるけれどみんなはレトロストリートとか昭和道と呼んでいる。

あきらの叔父の阿部 亨(とおる)の古書店「遊奇堂」もこの通りにある。

先日の「闇の行進」以降照明器具が新しいものに交換されて以前からするとものすごく明るい。

多分、地下街の管理の人はあの時の照明の故障による闇がよっぽど怖かったんだろう。
トラウマになっちゃったかもしれない。

それでこのストリートには全然似合わないただ明るいだけの照明器具をつけちゃったんだろう。

まあ、勝手な想像だけれど。

「ああ、あれからは何も変わったことはないね。」

叔父の亮はいう。

いやいや、充分変わっているから。

1人は古本の棚にはたきをかけているし、1人は店の奥からお茶をお盆にのせて出て来たよ。

野良鬼達じゃん。

「あきらさん、ユキオさんこんにちはー。」

とか言っているし。

「この子たちは?」

「アルバイトって訳でもないんだ。」

「最近ちょくちょくあきらの友達なんだって言って遊びに来ていたんだ。」

「それでサキちゃんがいない時には手伝ってくれるんだ。」

ふーん時々おじさんが出すおやつが目当てと見た。

そう思っているとわかって図星なのか2人の小鬼は「へへっ。」と言って頬を赤らめている。

人化して可視化しているが見た感じは中学生の女の子ぐらい。

確かおじさんの所にもそのぐらいの娘さんがいた様な....。

このストリートにも当たり前のようにたくさんの可視化していない鬼や妖がいる。

一部は積極的に人化して通りのお店の従業員だったり、中には店主だったりして人間にとけこんでいる。

人は亡くなると魂魄が冥界に行き魄を浄化して浄仏する。

成仏ではないよ。

浄仏というのはパーソナリティーを削ぎ落としてアカシックレコードに溶け込んで個から全体になること。

ところが時々魄を現世に置いて行ってしまう事がある。

これが残留思念だとか亡霊や自縛霊と言われる。

魄は拗れると悪鬼になってしまうので浄化する必要がある。

野良鬼達には魄を浄化する(食べる)役割がある。

ただ意味もなく現世でウロウロしているわけじゃないんだ。

ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み