第40話  羅烏那鬼(ラウナキ)神社1

文字数 1,109文字

ここは地下街の中央「泉の広場」から南東に伸びる通り。

チャイナタウンやコリアンタウンに
タイやベトナム、インドなどをごちゃ混ぜにしたような感じ。

いろんな国の飲食店や雑貨店がある。

お香や香辛料の匂いがする。

まさに「インターナショナルストリート」って感じ。

ここだといろんな衣装を纏った人や不思議な置き物が置いてある。

鬼や妖が可視化していても目立たないし、不自然じゃない。

現にそこここで鬼が人間のふりをして歩いている。

そしてその鬼達が親しげに手を振ったり挨拶してくる。

あれかー。

こいつらみんな野良の一族なのかー。

なんか複雑だなー。

小鬼達がまとわりついて手をつないできたりする。

子供はどう扱っていいのかわからないので苦手なんだけど、小鬼達はそんなことお構いなしになついてくる。

なんだか鬼や妖がゾロゾロついてくる。

「トッポギ売っているよ。ここのはすごく美味しいんだ。」

ユキオが店頭でトッポギやチヂミを売っているお店に行ってしまった。

他にも肉まんや油条っていう揚げパンを売っているお店や麺を打っているところが見られるお店もある。

いろんな国の色んな民芸品なんかも並べられている。

民俗学博物館を歩いている様で楽しい。

ついてくる鬼や妖は一層増えていく。

何かの串肉を持ってユキオが戻ってくる。

それをドーラとあきらにわたす。

「これすっごく美味しいんだ。テレビでも紹介されていたんだ。」

物凄く自慢そうに話すけれどそれ、ユキオは買って来ただけで自分のことみたいに自慢するところじゃないと思う。

でも、ユキオがあんまりにもいい顔をしているのでそんな意地悪は言えなくなってしまう。

まるで周囲にいた鬼や妖がみんな集まったって言うほどの行列になって来た。

これって百鬼夜行と同じなんじゃないかな?

「大丈夫じゃ、満ちているのは『陽の気』じゃ。周囲に良い事があっても悪いことはない。」

ドーラの機嫌も良さそうだ。

鬼や妖など見えないはずの通行人や店員までその『陽の気』に影響を受けるのか楽しそうに見える。

中にはあきらにむかって手を振る人間もいるが多分なぜ手を振ったのか自分でもわからないだろう。

この通りは「川上泊駅」につながっている。

かつては「大堺の港」に着いた貿易船からの荷物の上げ下ろしをしていた倉庫街だったらしい。

通りの終点の地上に出る階段の所まで来るとついてきていた鬼や妖達は手を振って立ち止まる。

地上に出てくるつもりはないようだ。

この先に強い結界がありそこに近づく事ができないのだろう。

ここには鉄道の「川上泊駅」に隣接して大きな野球のスタジアムがある。

その前につながるアーケードの半ばから裏通に入ると短い参道と小さな鳥居があり羅烏那鬼(ラウナキ)神社がある。
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み