第34話   青海鬼(おうみき)大社2

文字数 1,071文字

「あ。」

何かを感じたのかあきらがスマホを宙に向けて何かつぶやいている。
「・・・鬼魄弱退急急如律令!」
スマホのディスプレイに赤い晴明紋がくっきりと表示される。

それはディスプレイから飛び出して通りかかった二人の巫女装束の女の子のすぐそばに向かう。

晴明紋は空中で何かにぶつかったようにとどまるが一瞬の後バチンと音を立てて弾けた。

ドーラとアウラがあきらとユキオの前にでる。

オウミが巫女をかばうように両手を広げる。

「くそー、少し驚かしてやろうと思ったのに。まさか今どきの人間にこんな事が出来る奴がいるとはな。」

墨を流したような闇をたなびかせてそいつは姿を現わせる。

あきらは先の封印が破られたのを見て改めて九印を切る。

「青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女。」

スマホのディスプレイがスクロールして別の封印が表示される。

「こぞう、やめておけ。お前の力量はわかった。オレを封じるぐらいの事はできそうじゃないか。」

「禍邪(カジャ)かようやくのお出ましか、わしやアウラがこいつらについていておぬしに負けることなどないじゃろうが。」

ドーラが言う。

「こ、こいつが禍邪(カジャ)?」

「どうしたユキオ。」

「なんかドーラと同じでちっちゃくね?」

「あーっ。お前が気をそらすから坊主が印を切りきってしまったじゃないか。」

纏っていた墨の様な黒々とした闇が途切れ禍邪(カジャ)が姿を見せる。

ドーラとそんなに違わない。

ドーラは目と髪の色が緑色だけど禍邪(カジャ)は赤色。

角はないけど、ちっちゃい「けもみみ」がついている。

ハムスターか?

かわいいかも。

ドーラの色違いって感じ。

「おいっ、お前、雑な表現すんな、オレの方が少し大きいぞ。」

「なんだとー。わしの方が7mm大きかったぞ。」

「つまらん争いをするなよ。」

あきらが言うと。

「うるさい、大事なことじゃ。」

と2人に言われてしまった。

あきらの「呪」によって現れた青龍・白虎・朱雀・玄武・勾陳・帝台・文王・三台・玉女の護霊体が呆れて見ている。

「帰っていいかな?」

朱雀が言う。

「ごめんなさい。」

と謝って帰ってもらった。

「だいたい禍邪(カジャ)は何しに出て来たんじゃ?」

「オレの邪魔をする人間がいるってんで見に来たのさ。どの程度の奴か知りたかったしな。」

「いいか?俺達がする事は人間なんぞの知った事じゃないんじゃ。」

「お前が知らん顔をしていればいい事なんじゃ。」

「首を突っ込むなよ」

ちっちゃい体で目いっぱい偉そうに禍邪(カジャ)が言う

「お前こそ社に入り込んで何をしている。さっさと去れ。」

オウミは怒っている。

神社だからね。ここは。



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