第68話  播磨智徳の依頼1-6  追跡1

文字数 932文字

「あんまりその方術陣に近づくんじゃないぞ。」

ドーラが言う。

イタコシステムズのトップスター星川水音(ほしかわみずね)に案内させて来た播磨商事の営業所は超モダンなビルで霊的な事物を扱う会社には見えない。

もちろん普通の物産や観光資源を取り扱う部署もある。

むしろイタコシステムズやトモノリ社長の新規事業が異質なんだ。

ただ非科学的だとか眉唾物と言われるよりもむしろ地元の伝統を理解してくれていると言う好意の声の方が多いようだ。

地元の方的には観光事業の一部だと解釈してくれているらしい。

たしかに地元の方達の雇用も増えたし観光客も地場産業も増えている。

イタコシステムズのシステム開発室には立ち入り禁止のテープが貼られていた。

並べてある巻物や書籍、何に使うのかわからない機械や道具や床の中央に描かれた方術陣を別にすれば見た目は普通の会社の中の1セクションっていう感じ。

「やっぱりこの方術陣のせいだね。この部分の接続がショートして冥界につながっているし、方向も逆になっているから吸い込まれちゃったんじゃ。」

「ドーラはなんでも知っているんだね。」

ユーコが言うと、

「なんでもは......。」

「まった。そのフレーズはダメ。」

ユキオが止める。

ナイスだ。

「それじゃあこれに吸い込まれて行けばその探している人達にすぐ会えるんじゃないの?で、一件落着だね。温泉に入って、美味しいもの食べて...。」

ユーコはそれが目的だしね。

「待て待て、この方術陣は一方通行じゃから行く事はできてもここに戻って来れないのじゃ。」

「なんなのその中途半端な言い方。ここじゃなかったら帰って来れるって事?」

「この間、冥界の門を閉めてしまったからのう。あれが開いておれば若干のコントロールは出来たのじゃが。」

「この付近なら人間が出入り出来るのは島根県にある黄泉比良坂(よもつひらさか)ぐらいじゃろう。あとは海外じゃ。」

「ぜんぜん付近じゃないわ。今冥界に行ったら高級ホテルや温泉やご馳走はどうなってしまうのよ。」

「温泉やご馳走なら出雲にもあると思うぞ。冥界にもあるしのう。」

「ここはここの良さ、出雲は出雲の良さよ。冥界に行くのは明日よ。」

うーむ。完全にイニシアチブを取られておる。

あきらもユキオも首を縦に振る事しか出来ん。











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