第43話 決壊の予兆
文字数 1,464文字
「明日にするのじゃ。間もなく満ちの刻になる。満ちの刻に動いてはならん。」
ドーラが言う。
「えー。でも冥界の扉の封印が危ないんじゃないの?」
ユキオにはなぜ止められるのかわからないようだ。
「満ちの刻には冥界からたくさんの『鬼気』や『妖気』が溢れてくるんだよ。鬼や妖は引の刻とは比べ物にならないぐらいの力を持つようになるんだ。」
アウラが説明しドーラが続ける。
「わざわざ敵が強くなる時に首をつっこむ事もなかろう。」
「夜明けと共に潮止まりになり、やがて引きの刻になるのじゃ。」
「陽が天中に至る頃には鬼達も充分に弱体化する。それからでも遅くはないじゃろう。」
「その潮止まりの刻はどうなの?その間になんとか出来ないの?」
「ユキオはなんでそんなに急いでいるの?」
「だって、オレ達が引きの刻を待っている内にどんどん人の魂が喰われちゃうかもしれないんだろう?」
「ユキオは人助けのために結界を守ろうとしているのか?」
「え?そうじゃないのか?」
ユキオは怪訝な顔をしてあきらを見る。
あきらの様子が変だ。
声や姿が揺らいで見える。
その声色も違って聞こえる。
「オレは別に人間のためとか考えていない。自分と自分の身の回りの者達が巻き込まれなければいい。自分の知らないところまでは何もしてやれない.........そうだろ道満(ミチミツ)
。」
「ん?あきら、どうした?」
ドーラがはっとしてあきらを見る。
「道満(ミチミツ)はいつも市井の民のためだとか言って危ないところに首をつっこむんだ。」
「あきら、何言ってんだ?」
「ああ、道長(ミチナガ)のボンボンに金を出させていろいろ面白いことをしただろうあれはあれで楽しかったなあ、そうだっただろう道満(ミチミツ)。」
「ミチミツって誰なんだ?」
ユキオがつぶやく。
「蘆屋道満(どうまん)の事じゃ。若い頃は2人は道満(ミチミツ)、晴明(ハルアキ) と呼びあっておったのじゃ。」
ドーラがあきらの頭を叩く。
「あ?あれ?オレなんか変だった。」
あきらが我にかえったようにビクッとする。
ドーラがユキオに言う。
「おまえは大丈夫か?あきらはもしかすると晴明の意識を覚醒するかもしれんのう。」
「ユキオ、あきらがこの有様じゃ、今日のところはもう帰れ。」
「ちょうど日の入りが迫っているアウラ、気をつけてのう。」
すねこすりや家鳴りなどの小妖や小鬼があきらの周りに集まってくる。
「間に合わなかった様じゃのう。」
パリンっと音を立てて応急処置的に張った結界が砕ける。
「ゲーっ、虫、大ムカデじゃん。」
ユキオの足がすくむ。
それでもユキオはポケットからスマホをだして、あきらに転送してもらった護符の画像を開いた。
「えーっと悪妖退散急急如律令!でどうだ?」
描かれた護符の文字がスマホのディスプレイから飛び出して大ムカデに当たって動きを拘束する。
「おーっ、やるじゃんユキオ。じゃ、オレも。」
ユキオが拘束した上にあきらが放った護符が重なり大ムカデを締め付ける。
ドーラが巨大な鬼の腕を出現させて大ムカデを掴む。
「今出て来たところでまだなんにもしてないのにー。」
大ムカデが言う。
「しゃべるんだ?」
「じゃがなんかするつもりで出て来たじゃろう。」
「現世には新鮮な魂がゴロゴロしているから食べ放題だって。『秋のご馳走ツアー』って言ってキャンペーンしているよ。」
「誰が?」
「阿修羅(アスラ)が。」
「?」
「鬼神が?」
「とりあえずお前は帰れ。」
そう言ってドーラは大ムカデを握り潰した。
大ムカデは光の粒になって噴水の吐出口に吸い込まれていった。
「きゃーっ」
なんか見かけによらず可愛い声がした。
ドーラが言う。
「えー。でも冥界の扉の封印が危ないんじゃないの?」
ユキオにはなぜ止められるのかわからないようだ。
「満ちの刻には冥界からたくさんの『鬼気』や『妖気』が溢れてくるんだよ。鬼や妖は引の刻とは比べ物にならないぐらいの力を持つようになるんだ。」
アウラが説明しドーラが続ける。
「わざわざ敵が強くなる時に首をつっこむ事もなかろう。」
「夜明けと共に潮止まりになり、やがて引きの刻になるのじゃ。」
「陽が天中に至る頃には鬼達も充分に弱体化する。それからでも遅くはないじゃろう。」
「その潮止まりの刻はどうなの?その間になんとか出来ないの?」
「ユキオはなんでそんなに急いでいるの?」
「だって、オレ達が引きの刻を待っている内にどんどん人の魂が喰われちゃうかもしれないんだろう?」
「ユキオは人助けのために結界を守ろうとしているのか?」
「え?そうじゃないのか?」
ユキオは怪訝な顔をしてあきらを見る。
あきらの様子が変だ。
声や姿が揺らいで見える。
その声色も違って聞こえる。
「オレは別に人間のためとか考えていない。自分と自分の身の回りの者達が巻き込まれなければいい。自分の知らないところまでは何もしてやれない.........そうだろ道満(ミチミツ)
。」
「ん?あきら、どうした?」
ドーラがはっとしてあきらを見る。
「道満(ミチミツ)はいつも市井の民のためだとか言って危ないところに首をつっこむんだ。」
「あきら、何言ってんだ?」
「ああ、道長(ミチナガ)のボンボンに金を出させていろいろ面白いことをしただろうあれはあれで楽しかったなあ、そうだっただろう道満(ミチミツ)。」
「ミチミツって誰なんだ?」
ユキオがつぶやく。
「蘆屋道満(どうまん)の事じゃ。若い頃は2人は道満(ミチミツ)、晴明(ハルアキ) と呼びあっておったのじゃ。」
ドーラがあきらの頭を叩く。
「あ?あれ?オレなんか変だった。」
あきらが我にかえったようにビクッとする。
ドーラがユキオに言う。
「おまえは大丈夫か?あきらはもしかすると晴明の意識を覚醒するかもしれんのう。」
「ユキオ、あきらがこの有様じゃ、今日のところはもう帰れ。」
「ちょうど日の入りが迫っているアウラ、気をつけてのう。」
すねこすりや家鳴りなどの小妖や小鬼があきらの周りに集まってくる。
「間に合わなかった様じゃのう。」
パリンっと音を立てて応急処置的に張った結界が砕ける。
「ゲーっ、虫、大ムカデじゃん。」
ユキオの足がすくむ。
それでもユキオはポケットからスマホをだして、あきらに転送してもらった護符の画像を開いた。
「えーっと悪妖退散急急如律令!でどうだ?」
描かれた護符の文字がスマホのディスプレイから飛び出して大ムカデに当たって動きを拘束する。
「おーっ、やるじゃんユキオ。じゃ、オレも。」
ユキオが拘束した上にあきらが放った護符が重なり大ムカデを締め付ける。
ドーラが巨大な鬼の腕を出現させて大ムカデを掴む。
「今出て来たところでまだなんにもしてないのにー。」
大ムカデが言う。
「しゃべるんだ?」
「じゃがなんかするつもりで出て来たじゃろう。」
「現世には新鮮な魂がゴロゴロしているから食べ放題だって。『秋のご馳走ツアー』って言ってキャンペーンしているよ。」
「誰が?」
「阿修羅(アスラ)が。」
「?」
「鬼神が?」
「とりあえずお前は帰れ。」
そう言ってドーラは大ムカデを握り潰した。
大ムカデは光の粒になって噴水の吐出口に吸い込まれていった。
「きゃーっ」
なんか見かけによらず可愛い声がした。