第58話  悪霊狩り1 魂魄

文字数 1,000文字

「鬼や妖が遊んでいた百鬼夜行や弥勒菩薩の降臨のような人外が起こした事件と連続変死事件、そして学校のこっくりさん事件は別物じゃぞ。まだ、何も解決しておらんぞ。」

「えー。だって鬼が魂を食べたって言ったじゃん。」

「人は亡くなると魂(こん)と魄(はく)に分かれる。鬼が食べるのは魄(はく)。」

「魂(こん)は魄(はく)が引き剥がされて浄化されると冥界を経てアカシックレコードに吸収され昇華される。」

「別に鬼が人を殺すわけではない。まあ、そそのかしたりはするけどね。弱ったり、業に汚れた魄(はく)は美味しいからね。」

ドーラが説明するには現世に残された魄(はく)が鬼になると言われるがそれじゃあ鬼の共喰いになっちゃう。

キョンシーとかグール、アンデッドの類いを鬼と同一視してしまったんだろうね。

「魄(はく)がなるのは怨霊とか悪霊の類い。こじれてないやつでは地縛霊とかだな。背後霊は最近はストーカー呼ばわりされるから人気がない。」

「こいつらは鬼が食べることもある。ちょっと味がくどいんで除霊してマイルドにするとうまいらしい。」

「除霊があくぬきのようだな。」

ユキオが不満そうだ。

「まあ、鬼や神仏の事ならどうしょうもないが霊は元は人間だし、人間の事は人間がけりをつけないとだな。」

珍しくあきらがすんなりとうなづいた。

「それじゃ、ややこしいやつがまだうろついているってこと?」

ユキオが言う。

「殺したのか、魂魄が剥がれるように仕向けただけなのかはわからんがな、奴らは直接人を殺したりできるわけじゃないからのう。」

元は人間と言ってもキョンシーやグールのように実体を持っていないので物理的な攻撃は出来ない。

怨霊にかじられたりちぎられたりって言うのはそういうイメージを与えられただけ。

ただ人間は強力な暗示に対して現実と同じ刺激を受けてしまうから充分危ないよ。

「うん、怨霊や悪霊は人の恐怖や執着、迷いを掻き立て衰弱させるんだよ。呪いをかけるんだ。」

「呪いかー。」

あきらが言う。
「あきら、呪いが得意だもんね。」

ユキオニヤニヤしている。

「ユキオの方が得意なんじゃないか?」

それは晴明と道満の時の事じゃないか。

呪いというか後催眠効果や暗示を使って平安時代に殿上人とかをたぶらかして荒稼ぎをしたもんだ。

それで一条戻橋に別荘を建てて優雅に暮らしていたし。

あきらがニヤニヤしながら、かた焼きの煎餅をガリガリかじっている。

「おまえ悪い顔してるぞ。」


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