第72話  播磨智徳の依頼1-10 帰還

文字数 768文字

「おかえり。」

トモノリがタマモと一緒に黄泉比良坂(よもつひらさか)の入り口の前で出迎えてくれる。

「そろそろ戻ってくる頃合いかと。」

さすがは仙人そんな事がわかるんだ。

「俺たち行く意味あったのかな?」

ふふふっとトモノリが笑う。

「冥界で鬼達と大暴れするつもりだったのかい?」

「まあ、それはないか。」

「ヤーマがいたのだから方術士達だけでも帰って来れたんじゃないのかな。」

あきらは不満そうだ。

本来あきらは引きこもり体質で出不精なのでいろいろと理由をつけないと出かけない。

「少年、我ら方術士と陰陽師では似て異なりだ。少年のように長年積み重ねて来た身の研鑽度合いには我らの数百年単位では到底及ばない。その時空を渡る力を自覚しても良いと思う。何はともあれ助かったよ。ありがとう。」

蔡さんはそう言って笑う。

あきらは覚醒したものの自分の能力についてはまだ半信半疑のところがある。

特に現代では科学的という判断基準が根底に出来上がってしまっているのでまさかそんな事出来る訳がないと自分で思ってしまうのだ。

物理にも化学にも当てはまらない現象を引き起こすがなぜなのかは理由付け出来ないし証明も出来ない。

信じさせることもそうだがそれが出来てしまう自分を信じる事も難しい。


トモノリは出雲の老舗の温泉旅館を予約していた。

やはり日本海がすぐ側なので海鮮料理が中心のようだが合わせて蕎麦がとても美味しい。

恐山から冥界に行きそして出雲と海外旅行ではないけどかなりの距離を旅したみたいだが時空を渡った事もあって実感が持てない。

豪華なホテルに旅館、温泉にご馳走三昧。

トモノリ社長の大盤振る舞いだ。

あの3人の方術士を無事に戻せたことはそんな事では贖えないぐらい大切なこと。

何もしていないとあきらは言うけれど彼でなければ出来なかったことだ。

あきら達には気分良く協力してもらわないとね。






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