Folge 34 理解不能
文字数 2,327文字
久しぶりにタケルと二人だけで風呂に入って話をした。
風呂を出てからタケルの表情はずっと明るい。
これだけの事でこいつらの気分を明るくできるのか。
オレでも役に立てているってことなのかな。
いやいや。
こいつらが大人なだけだよな。
いつまでも兄になりきれないオレがそんなこと……。
助けてもらっているのはオレばかりで。
なんだなんだぁ?
朝から騒がしい。
それに何の躊躇も無く我が家に入って来るとは。
まったく、男の価値って結局は体を張れるかどうかってことなのか?
それすら求められるものが無いよりはマシとは思うけど。
あ、いやいや。
そんな低レベルな次元で物事を考えるのはマズイ。
自分を安売りしちゃだめだぞ、サダメ。
それはいいとして。
あの二人が喧嘩とは珍しいな。
何を言い争っているのかな。
はは。
オレのことでした。
ま、まあ、今あの二人から出てくる話題と言えば、オレしかないとも思うけどさ。
おっと。
調子に乗ってはいかんいかん。
あの二人に会う前と比べて対人感覚が変わってしまったようだ。
オレに対する評価と言うか。
何かが麻痺してしまっているようで、自分基準が分からなくなってきた。
モテるのも辛いものなのな。
ああそういうとこだよね。
いかんと思ったそばからこれだよ。
そう。
美乃咲姉妹はまっすぐに向かって来た。
タケルと一緒に食卓で朝食の用意をしているオレの所へ。
挨拶をしながら咲乃の唇が躊躇なくオレの唇へと着地した。
平和な朝だ。
どうも平和な朝だという情報はガセだったらしい。
さて、恋人同士で朝の挨拶がキスというのは当然なのか。
オレにはわからないのだけど。
困っている時間を少しでも短くしようと、自然にタケルへと目をやった。
そう来たか。
確かにそれこそが咲乃なのだけど。
どうにかしたいんだが、無理なのかな。
それを嫌かと聞かれると、正直嬉しいから困る。
オレって駄目なやつだ。
知ってた?
う。
これでもがんばっているはずなんですよ、はずなのです、はず。
ツィスカがツツツっとオレの横に来た。
そして腕に抱き着く。
しっかりとカルラも主張する。
そう。
あくまでも咲乃が彼女なのは仮だから。
オレの正彼女は妹二人……。
正彼女って。
いよいよハーレム感が増して来ているなあ。
大丈夫かな、オレ。
咲乃はオレの彼女という位置を必死で守る行動をとる。
その一番が妹たちの機嫌を損ねないようにすること。
とにかく妹の言うことには従うんだ。
美咲がツィスカにそんなことを言い出した。
最近はオレから離れてタケルと話していたのにどうしたっていうんだろ。
タケルの話では、まだ話せる状況では無いようだったし。
おいおい。
話が通ってしまうのかよ。
まるでドラマの芝居のようにがっくりと首をうな垂れる咲乃。
相当なショックを受けたようだ。
大変わかりやすい。
いつものこととはいえ、オレ抜きでオレの事が決まってゆく。
この話の中心はオレだと思うんですけど。
何かを言ったところで聞いてもらえないけどさ。
情けなさ過ぎる。
はあ。
これって有りな話なの?
もう完全にオレの脳では理解不能になっています。
いきなり彼女を変えられてもどう接すればよいのやら。
先が思いやられるなあ。