Folge 89 特技披露
文字数 1,707文字
咲乃と、その……いわゆるイチャイチャとやらをして……。
清々しい朝が甘々しい朝に変わった。
二人で眩しくなった太陽を見る。
少し
しばし無言で眺める。
そして、どちらからともなく別荘へと戻り始めた。
言葉を発しなくても通じていると思えたのが嬉しかったな。
ああ、じゃなくてさ。
……教えてよ。
まったくその通りです、はい。
料理はさっぱりでして。
手伝って?
キッチン周りを確認して道具を手際よく準備し始めた。
なんだか指示され始めたぞ。
料理そのものでなければ手伝えるけれども。
ティーカップからエスプレッソカップ、マグカップ、ガラスのいろんな形……。
ほとんど必要無いんじゃないのか? これ。
こういう感じが別荘感を高めるよな。
段々いい匂いがしてきた。
ちょっと待て。
咲乃は料理している。
カルラや美咲より手際が良い様に見える。
マジかあ。
ヤバい。
この子、すっげぇ魅力的だ!
素直に伝えようと思ったのに。
何を言おうとしたかは分かったみたいだけどね。
見た目も匂いも完璧なオムレツが次々と乗せられていく。
二つのフライパンで小ぶりに作ったようだ。
卵料理を一度にたくさん作るのって、上手いんだろうな。
作れない奴からすれば、何を作っても凄いんだけどさ。
焦げてもいないし、可愛いくて美味しそう。
横にはハッシュドポテトが並べられた。
いつサラダ作っていたんだ!?
なんだか色んな野菜が綺麗に切られ盛られている。
あ、半熟卵も乗っているぞ。
駄目だよ。
こういう凄い子は思いっきり構いたくなってしまう。
使った道具を手際よく洗って片付けまで終了してゆく。
これは上手いというより、得意? 寧ろ特技か!?
ドヤ顔では無く、涼し気なのに可憐な笑顔をさりげなく見せていた。
妹に続き、この子にもガッチリ手綱を握られてしまったような気が……。
主従関係が逆転してしまう!?
順番に妹の頬を撫でていく。
弟の頬も撫でてくれた。
それは……兄として嬉しい。
女子に対しての綺麗とは違うんだよ、こいつは。
でも、言葉で表現すると綺麗としか言いようがないんだよな。
何も気にせず笑い合う仲になるなんてね。
まったく。
初めて会った時もインパクトが凄かった。
あれからこんな仲になるとは思えなかったな。