Folge 47 救済
文字数 1,448文字
暑い。
夏休みが目の前に迫ってきているから当然か。
その前に熱いイベントがあるのだ。
期末テスト。
オレは授業中に先生が漏らす大事なキーワードを逃さない。
それをかき集めた上で出題者の気持ちになってヤマを張る。
これが良く当たる。
ところが今回は諸々の事情により、授業の内容がほぼセーブできていない。
ヤバい。
ヤバいんだよ!
何の情報も無いのだ!
今回は上位陣から脱落かも。
ドアをノックされたことで抱えていた頭から手を離した。
咲乃のようだけど、なんだろ。
一人、か。
ドアを締め終わるまで外をジッと見てみる。
誰もいないようだ。
そんなにきちんと謝られると申し訳ない気がしてしまうのはなんでだろう。
いくらか重ねた冊子やプリントが崩れそうになっている。
それを落とすまいとして声が出たみたい。
結構な重量。
いろいろなサイズの紙ものが重ねられているから崩れやすい。
なんと!
顔を火照らせて言うとさ、めっちゃ可愛いんですけど!?
こいつは妙なギャップがあるんだよな。
それにこの容姿だろ。
すげぇ。
ん?
両手を広げて見せている。
なんだよそれー!
咲乃が甘え上手になっている!
くぁぁぁっ!
あげるよあげる!
いくらでもっ!
テテテテっと寄ってきたところでオレは立ち上がる。
そして思いっきり抱きしめた。
抱きしめる腕に力が入る。
久しぶりに咲乃を感じながら間近で顔を見る。
鼻の頭をちょんと触って横へ滑らせる。
鼻を並べるとそのまま唇を重ねた。
オレからこんなキス、レアなので本物のご褒美です。
顔が真っ赤。
こっちまで照れるだろ。
いや、抱きしめてからは照れまくりなんですけど。
真っ赤な顔のまま部屋を出ていく咲乃を見送った。
勢いでしてしまった、キス。
やれてしまうもんだな。
雰囲気とか、勢いって大事だね。
いやいや、怖いね。
それにしても助かったな。
一からやるのは変わらないけど。
全く無かった情報が一気に揃ったんだ。
みんな気を使って時間を作ってくれている。
これを無駄にしてはいけない。
いつも通り、いやそれ以上の結果を出さないと。
両頬をペチペチと叩いてシャキッとさせる。
頑張ったら誰と寝ようかな。
やっぱりこんなにありがたいヘルプをしてくれた咲乃だよな。
うんそうしよう。
うわ、なんて贅沢なことを。
でもさ、そんなエサぶら下げれば頑張れる!
あ、いい加減始めよう。