Folge 55 テストって簡単!?
文字数 1,628文字
まるで砕氷船が通過している様だ。
三人が通過すると、そこにいた生徒達は廊下の左右に避けたままになる。
そしてただ茫然と立ち尽くし、オレ達を見送っている。
妙に面白いんだよね、これ。
避けられているのだからずっと嫌な思いをしていたんだ。
だけど、オレを理解して好いてくれる二人が一緒にいるようになった。
見た目は同じでも、気分が違う。
いや、変わっている所があったな。
生徒達から感じていたオレに対する嫌悪感が伝わってこない。
見つめる目も、攻撃から興味になったような気がする。
試しに少しだけ連中の表情を見てみた。
眉間にシワを寄せているようなやつは一人もいない。
声を掛けたそうにしているヤツまでいる。
それぐらい美乃咲姉妹の存在感が凄いんだな。
砕いていたのか。
いつもどうやって砕こうかと悩んでいたのに。
悩んだ時間を返せよ。
モテると言っても、この二人だけだぞ。
それも同じ顔の姉妹だ。
まあ、中身は別人だけどね。
そうなんだよな。
オレなんて美咲の存在自体知らなかったよ。
美人で有名なら知ってそうなものだけど、余程関係ない話だと思っていたんだな。
あと、美咲自身が目立つことを嫌っていたことも要因の一つかも。
こいつ、唯一の味方だと思っていたけど、最大の敵かも知れない。
姉妹を怒らせちゃってさ。
サラッと躱せないオレも情けないな。
反省。
椅子に座るよう促されて、座ると頭を撫でられた。
咲乃が凄く嬉しそうなところをみると、撫でたかっただけみたい。
ションボリしていた裕二が話に割って入ってきた。
隣で咲乃が笑い転げている。
こんなストレートな笑いをするようになったんだな。
そりゃ他の奴らが注目するのは仕方ないよな。
もう、こいつが何を言っているのかわからなくなってきた。
隣でケラケラ笑っている咲乃を見て癒されよう。
……可愛いし、綺麗な子だなあ。
こうして眺める時はいつも思う。
こんな子とオレで釣り合いが取れるのか?
妹ともバランスの悪さを申し訳ないと思っているぐらいなのに。
なんでオレがいいんだか。
これと比べたら、テストの方が遥かに簡単だ。