Folge 50 両手に双子
文字数 1,502文字
おい、オレは何を言った!?
手を握り直して大きく振られている。
ちょっと恥ずかしい。
校門を出てからは手を繋いで歩いているんだ。
オレから握ったんじゃない。
もちろん咲乃の方から。
……オレから握ってもいいのか?
否定したら違和感が。
オレから握るって随分と恥ずかしいぞ。
妹とはどうだっけ。
大抵は妹からだな。
基本的にオレからモーションを掛ける前に掛けられている。
男としてどうなのさ。
もっと肉食系でいいのかな。
オレから動かないから好かれているのかもしれないし。
どっちのタイプで動いたらいいんだよ!
歌っている。
咲乃が歌を歌っているぞ!
ニコニコして言うな。
そういうのさ、可愛いと思っちゃうから。
最近、こいつが何かをするといちいち可愛く見えるんだが。
空いている手を美咲に差し出してあげた。
何故だか話に加わらないし、ついてくるだけなんだ。
美咲らしくない。
両手に双子。
妹じゃないんだぜ!
我ながら理解不能な状況。
体験期間では圧倒的に咲乃の方が話せている。
同クラスだからね。
話のネタは同じことが多くなるから、意識しなくても話せていた。
その点、美咲とは共有する時間が少ないわけだ。
話が盛り上がるまでに多少時間が掛かりやすかったのかな。
振り返るとそう思う。
振り向いた咲乃はオレに向かってベロを出した。
今のベロ出しはキュンときた。
キュンってなんだよと今まで思っていたけど、キュンってなるんだな。
めっちゃ可愛かった。
アンコールしたい。
その手があった。
実は話すと言ってもどうしたものかと困っていたから。
あはは。
笑って誤魔化しとこ。
美咲の握る手に力が入り、咲乃と競う様に腕を振られる。
でもね、オレの腕は交互ではなく、同時に前後に動かされているんだよ。
恰好悪いし、歩きにくいし。
でもこんな感じで二人と歩くのは初めて。
競っているかとも思ったけど、どうやらどちらも楽しそう。
高校生で手を繋いでブンブン振るってことは無くなるよね。
小学生の遊びだもんな。
たまに小学生な事をするとやたら楽しい時ってあるよね。
今が正にそれ。
ゴチャゴチャと考えずに今はこの瞬間を楽しみますか。