Folge 39 ミルク
文字数 1,529文字
さてさて。
彼女がチェンジされましたよ。
なんだか酷い男に聞こえる……。
オレがチェンジしたわけじゃないからね!?
彼女が仮彼女を決めて、仮彼女が次の仮彼女に替わっただけだから!
――言えば言う程酷いな。
もう黙ってタスクをこなそう。
いや待て。
彼女と付き合うことをタスクとするのは失礼過ぎた。
クズだ、オレ。
首を傾げる美咲。
そりゃそうだ。
誰だっていきなり謝られたら何のことかわからないよね。
美咲はオレの真正面に立った。
今度は逆に何をするのか分からないことをされちゃった。
同じく首を傾げて様子を見る。
確かに。
こちらとしても、同じ容姿の子から既にされたことに驚きはしない。
全く問題ないぞ。
弟妹もこちらを同時に見る。
いいんじゃない? と目で伝えてきた。
タケルがにこやかに手を振ってくる。
美咲と話しをしてきたタケル。
その辺の思いも詰まった送り出しなんだろうな。
さて、美咲がご所望の二人きり時間。
この時間が一番困るかも。
何をすればいい時間なんだろ。
無理してでも二人きりにならなきゃいけないのかな。
咲乃と付き合ってみたことで何かは少し分かった気でいたけれど。
何も分かっていないや。
美咲と楽しくなれたらそれでいい。
それだけで良いんだろう。
と思っておく。
ガチャリと滅多に聞かない音が聞こえた。
部屋の鍵が掛けられたらしい。
鍵を?
なんとなく気持ちはわかる。
鍵をかけておけばよかったと思ったことは、しばしばある。
思い出すと恥ずかしいことばかりだ。
あはは。
ふう。
美咲も多少は緊張しているのかな。
喉も乾くよね。
オレも飲み物は賛成。
助かるよ。
彼女って思うだけで、今までとは違ってくる。
妙に意識するからね。
ベッドから降りてミニテーブル前に座る。
綺麗に笑うよなあ。
同じだけど違いを感じるのが双子の不思議。
これって双子の妹がいるオレならではの感覚なのかな。
裕二や他の連中の反応を見ていると、困惑していることがあったな。
どっちだか分からなくなるって。
オレ、分からなくなることが分からない。
自分のを一口飲んでからこちらをジッと見ている。
あれ?
なんだか急に瞼が重くなってきた。
ちょっと、おかしいな。
全身の力が抜けて、座っているのに上半身を起こしていられなくなる。
このことを美咲に話したいのだけど、口もまともに動かない。
効果?
何のことだ。
んと、あの――
――脳内で考える
――ことまで
――呂律、が
――まわらなくなって……きて……いる