Folge 80 いもうと沼

文字数 1,790文字

 美乃咲家別荘へ来てからというもの。

 各人との仲が深くなっている気がする。

 はっきりと想いを口に出し合っているからかな。

 今まで以上に気持ちが近づく感じがするなんてさ。

 近づく限界でいたのだけどな。

 この先、時が経つにつれてもっと変化すると思う。

 今この時感じているよりも近づくのかな。

 未知の感覚であろうことが容易に想像できる。

 想像もできない今は恐怖心しか湧いてこない。

 そう言っているうちに毎日が淡々と過ぎて行く。

 その毎日では気づかずに進むと思う。

 ふと気づくとあの時より……となるのだろう。

だよな。気づけば全員大きくなっているもんな
何? わたしの胸の話?
ちょ……なんで。胸の話ししてたっけ?
だって大きくなっているって
胸のことじゃないよ。……まあ、最近少し成長を感じるけども
そうなの!? サダメに揉ませ過ぎかな
揉むと大きくなるってのは違うって話ししたよね
ああ、そっか。そうだったわね
いやだから、胸の話しじゃないんだってば
じゃあ何よ
気づけばみんな成長しているなってこと。身体もそうだけど、中身もさ
ああ。全員って言ってたわね。でもどうしてそれを?

 別荘に着いてからも恋人握りのままでカルラとくっついていた。

 そしていつものようにダンジョンに入り込んで。

 知らぬ間に考えている事を口から出していたわけだ。

なんだかね、ここに来てから今まで以上に心が近づいた気がしてさ
入り込んでいたのね。触れている時ぐらい、わたしのことだけ考えてよ
カルラはオレの中にある何かを鷲掴みにするのが上手いよな
ふふ。それが出来なきゃサダメが離れてしまうわ。あなたのカルラなので
ほら、その言葉。握りつぶす程の威力があるぞ。安心するようになっているけどさ
サダメの中に入り込みたいぐらいだから。と同時に包んでいたい

 この子はほんとにもう。

 つい身も心も委ねてしまう。

 してしまっても良い相手だし。

 ――――良い、よな。

兄ちゃんとさ、カルラみたいにしっとりとお話ししたい

 真後ろでずっと聞いていたらしいツィスカがいる。

 なんだかこの感じも好きだ。

 振り向くと弟妹がいるって、幸せなんだよ。

すればいいじゃない
どうやるの?
どうって……

 これは……純粋にヤキモチなのかな。

 はは。

 これがすでに可愛くて。

そういうツィスカが可愛いんだが。カルラじゃないのがツィスカなんだよ
……分かりにくい。可愛いっていうのは嬉しいんだけど
双子とはいえ、それぞれ違うじゃないか。思うまま来てくれればいいんだよ
あたしとのお話し、好き?
もちろん! ツィスカの何を嫌いと言った?
 力を無くしていた瞼が元気を取り戻し、パッと見開いた。
――嫌いって言われたこと無い! うわあ、言われたこと無い!

 二度言わなくても。

 大事な事ではあるけどさ。

だろ? じゃあどうしたらいいでしょうか?
いつも通りでいいってこと?
正解。カルラみたいにしたければ試してもいいし、無理してすることでもない

 と、長女と話しをしている。

 自分に振り向かせるの上手いんだぞ、ツィスカ。

兄ちゃん!
はい
大好き!
よく知っているよ! もっと好きになって、ずっと好きでいてくれよ

 あらら。

 潤んでしまったから、目の周りの白い肌がピンクになっちゃった。

 オレも思いっきり照れ臭いことをサラッと言ってのけたな。

 本当のことだし、みんなが分かっていることだろうから……。

 首ってよく抱きしめられるんだな。

兄ちゃん……兄ちゃん、兄ちゃん!
わたしの前でツィスカを落とさないでよ
さっきカルラに落とされた身なのだが
……落ちてくれた?
どっぷりとカルラ沼に。窒息しないようにはしてくれ
いなくなったら、あたしもいなくなる時。あたしの中でゆったりしていて

 ふむ。

 こういう話も段々と深くなってきた気がする。

 想いのキャッチボール。

 ボールの大きさに変化を感じるんだ。

どうしましょ。この輪の中に入れてはもらったけれど
ボクたちももっと気持ちを伝えるだけだよ
そうね。もうサダメちゃんには掴んでもらったから。焦らずいつも想いを伝えるだけね
いやあ、兄ちゃんは凄いな。全部受け止めちゃうんだもん

 中一のタケルがこんなの真似しなくていいんだよ。

 実ははっきり誰とどうとか決められていない奴だ。

 決める必要を感じないからだけどさ。

 それが正しいとか云々は知らない。

 ただ、自分に素直に生きちゃおうと思う。

 ――――そう、決めたんだ。

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登場人物紹介

名前:藍原サダメ(あいはら さだめ)

学年:高校一年生

身長:177cm


藍原家長男。家事全般苦手な上に、不器用。

名前:藍原フランツィスカ(あいはら ふらんつぃすか)

   身内からはツィスカと呼ばれている。

学年:中学二年生

身長:157cm


藍原家長女。元気でポジティブ。

名前:藍原カルラ(あいはら かるら)

学年:中学二年生

身長:157cm


藍原家次女。冷静で負けず嫌い。なぜか肌は薄浅黒い。

名前:藍原タケル(あいはら たける)

学年:中学一年生

身長:156cm


女装をすると姉より美人になるほどの美形。基本大人しいが何かと不思議君。

名前:美乃咲美咲(みのさき みさき)

学年:高校一年生

身長:164cm


サダメの同級生。隣のクラス。


名前:美乃咲咲乃

学年:高校一年生

身長:164cm


美咲の双子の妹。サダメとはクラスメイト。

名前:左近裕二(さこん ゆうじ)

学年:高校一年生


サダメの親友(?)でクラスメイト。

隣の席。



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