Folge 80 いもうと沼
文字数 1,790文字
美乃咲家別荘へ来てからというもの。
各人との仲が深くなっている気がする。
はっきりと想いを口に出し合っているからかな。
今まで以上に気持ちが近づく感じがするなんてさ。
近づく限界でいたのだけどな。
この先、時が経つにつれてもっと変化すると思う。
今この時感じているよりも近づくのかな。
未知の感覚であろうことが容易に想像できる。
想像もできない今は恐怖心しか湧いてこない。
そう言っているうちに毎日が淡々と過ぎて行く。
その毎日では気づかずに進むと思う。
ふと気づくとあの時より……となるのだろう。
別荘に着いてからも恋人握りのままでカルラとくっついていた。
そしていつものようにダンジョンに入り込んで。
知らぬ間に考えている事を口から出していたわけだ。
この子はほんとにもう。
つい身も心も委ねてしまう。
してしまっても良い相手だし。
――――良い、よな。
真後ろでずっと聞いていたらしいツィスカがいる。
なんだかこの感じも好きだ。
振り向くと弟妹がいるって、幸せなんだよ。
これは……純粋にヤキモチなのかな。
はは。
これがすでに可愛くて。
二度言わなくても。
大事な事ではあるけどさ。
と、長女と話しをしている。
自分に振り向かせるの上手いんだぞ、ツィスカ。
あらら。
潤んでしまったから、目の周りの白い肌がピンクになっちゃった。
オレも思いっきり照れ臭いことをサラッと言ってのけたな。
本当のことだし、みんなが分かっていることだろうから……。
首ってよく抱きしめられるんだな。
ふむ。
こういう話も段々と深くなってきた気がする。
想いのキャッチボール。
ボールの大きさに変化を感じるんだ。
中一のタケルがこんなの真似しなくていいんだよ。
実ははっきり誰とどうとか決められていない奴だ。
決める必要を感じないからだけどさ。
それが正しいとか云々は知らない。
ただ、自分に素直に生きちゃおうと思う。
――――そう、決めたんだ。