Folge 24 耐えきった一日
文字数 3,406文字
咲乃は時々オレの袖を掴みながらも一日なんとか耐え切った。
耐えたものに負けたから休学していたんだ。
それなのに全授業制覇。
オレは何度か保健室へ連れて行こうとした。
見ていられないぐらい蒼ざめることもあったし。
だが咲乃はすぐに察知して何も言うな、何もするなと止めてきた。
鞄を持って歩き出そうとすると、咲乃はオレの袖を慌てて掴む。
他の生徒達が何か言いたそうにしているのを尻目に教室を出る。
すると焦り気味に美咲が小走りで向かって来た。
オレと美咲で咲乃を挟んで足早に校舎を出る。
窓から多数の視線を浴びながらさっさと校門を出た。
それでも下校を始めている生徒はいるから目線は途切れないんだけど。
袖を掴んでいた咲乃は腕に抱き着きだした。
ん、まあ、今は何も言わないでおこう。
美咲もなんだかニコニコしている。
二人の間に嫉妬はないのかな。
うちの妹は許しつつ許していないってとこがあるけれど。
今日は特別というか。
咲乃の状態見ていて、あんまり嫌がる態度とかできなくない?
まさかそれが狙いとか!?
オレが?
モテている?
どこが?
彼女いませんけど。
というか、妹が彼女ですけど。
それも二人も。
血が繋がっているから、ノーカウントでしょうし。
学校の女子はみんな白い目で見ますけど。
シス&ブラコン男がモテているわけないでしょうに。
咲乃がこうしているのも偶然知っているオレがいたからでしょ?
美咲が同じクラスだったら問題ないのでは?
あ、そういえば。
気づいていなかったのか!
妹達は一緒のクラスだ。
先生の目が届くところに纏めておかないと対処できないから。
先生に纏めておくって言われた時はなんて言い方するんだ、と思ったけれど。
あいつらの所業を聞くと何も言えなかった。
授業が終わるごとに走って見に来ているぐらいなら、一緒にいた方がいいだろう。
おっと、下校中の中学生集団が見えてきた。
今日は三人一緒だな。
どうもタケルの後ろには女子が数名付いてきているようだけど。
おまけにウィッグまでしているから三姉妹にしか見えん。
また妹達がタケルで遊んでいるな。
タケルは弄られ慣れ過ぎて、女装ぐらいじゃ何も嫌がらない。
平気で三姉妹化するんだ。
それを妹達が気に入っているから当たり前の光景になっている。
そしてタケルファン達もそんなタケルを大好きなわけで。
一日中女子に弄られまくっているタケル。
あいつ、黙っているけどハーレム状態なの分かっているんだろうか。
ツィスカが気づいてこちらへ突進して来た。
う~ん。
今はクタクタの咲乃がいるからできれば受け止めるのを避けたいんだけど。
そう言って頼る相手を美咲に替えて避難した。
これでとりあえずいつも通りに対応できるかな。
ツィスカは鞄を投げ捨ててジャンピングハグを仕掛けて来た。
これ腰と肋骨に響くんだよね。
でもツィスカは抱き着き慣れている。
そのおかげ? で抱き着かれても思ったほどの衝撃は来ない。
寧ろその後の締め付けが厳しい。
そう言って目を閉じ、当然! という表情をして待機している。
駄目です。
この子は可愛すぎる。
迷わずキスしてしまう。
やり方がさっぱり分からないことがある。
ツィスカをササっと剥がしてカルラが抱き着くこと。
どうやっているの?
カルラもノリノリかよ。
女子同士の変な絆が出来上がっている。
クルっと反転したツィスカが咲乃を見る。
ツィスカが絶好調だな。
ん?
タケルファン達の視線が痛いんだが。
また反転したツィスカがドヤる。
なんじゃそりゃ。
扱いが彼氏でも兄でも無いじゃないか。
こいつらの間で出来上がっている世界。
オレが分かるはずも無く。
こんな風に楽しんでいるんだね。
タケルを使って遊んでいるだけだろと言ったら……睨まれるからやめておこう。