Folge 17 揉む!
文字数 2,745文字
ツィスカの可愛い声でオレの耳が起きた。
ああ、これのことか。
カルラが嫌がらないからずっと胸を鷲掴みして揉んでた。
ん?
ツィスカが動き出すと大抵何かが起こるんだけど、大丈夫かな。
先に起きた方が得策か?
ははは。ツィスカが恥ずかしがっているよ。
言えないようなことお願いするのか?
さあ、言えるかな?
ははは! 困っているツィスカが可愛すぎるよ。
そこまで言ったならいつもの猛進で言っちゃえばいいのに。
カルラの後頭部しか見えていない。
それでもツィスカの頬が膨れているのが想像できる。
女子中学生の妹からはっきりと「胸を揉んで!」なんて聞ける。
これは少数だろうなあ。
いや、妹のいる奴の話を聞いたことがある。
大抵のご家庭では敵対関係でしかないと聞く。
となると、ありえないことなのかな。
ああ面白い。
これが藍原家だよ~。
これこれ!
妹とじゃれるのは最高に楽しい。
両腕を広げるとカルラがツィスカ側へ転がっていく。
それを乗り越えてからツィスカがカルラの居た場所に綺麗に収まった。
ボディサイズが一緒だから抱きしめていた熱の差ぐらいしか違いが無い。
ジェットコースターの安全バーのように両腕を閉じる。
離れないようにギュッと抱きしめる。
抱きしめた感覚は二人共ほぼ一緒。
なんだけど、何もかもが一緒なわけじゃない。
ツィスカだ、と分かる匂いや感触があるんだ。
また新たな安心感に包まれる。
ご所望通り胸を鷲掴み。
これ、オレもめっちゃ得しているよね。
猪突猛進型なのに敵前でどうすればいいのか悩んで止まる。
という特殊スキルの持ち主ツィスカ。
面白いしそこが可愛いんだよね。
親バカか。
いや、兄バカって言うのか?
任されたので、しっかりと両方揉んであげよう。
オレが癒されるんだー。
自然に三人で笑い合った。
いつまでもこんな調子でいられたら。
話をしている時は毎度そんなことを思うんだ。
ドアの向こうから声がする。
美乃咲姉妹も起きたようだ。
途端に妹二人の表情が曇ってしまった。
二人が対応するわけがないので、オレだけで対応する。
玄関ぐらいまでは見送りしようかと思った。
だけどツィスカが脇を締めて動けなくしたからそれは叶わなかった。
またそういう嬉しいことを。
今日はゆっくり家族で過ごしていつも通りを取り戻すことにするか。
オレも正直なところ随分と疲れた。
今までに経験していなかったことが続いたからだよな。
ということは、弟妹も同じなわけで。
そう言ったらカルラがオレの背中へ回り込んで無理やり抱き着く。
ベッドの端だから思う様に乗っかることができない。
ぐいぐいオレの背中を押す。
ツィスカが尺取虫のように動いてスペースを作る。
すると、カルラが背中に抱き着いてきた。
妹が双子である特権。
このサンドウィッチはいつも最高なのです。
びっくりした。
まさか本人から返事が来るとは思っていなかったから。
結局ウチの四人は同じ部屋で一緒にいないと安心しないんだな。
相変わらず、ということで。
ひとまずゆっくりしよう。