Folge 07 長女vs次女
文字数 3,035文字
――――へ?
オレとツィスカはフリーズした。
ツィスカの声じゃない。
声がしたのはベッド上でもない。
振り向くと――
しゃがんで膝の上に両腕を乗せ、さらにY字にした両手に顎を乗せている子。
カルラがこちらをジッと見ていた。
それも随分と冷めた目で。
ツィスカの物真似入りで答えられた。
それって、めっちゃ最初からじゃ~ん!
オレとツィスカはまだ同じ体勢のままカルラの話を聞いている。
自信満々な表情でオレへの愛をアピールしてくる。
当事者がオレではないのかと。
まるで映画でも観ているような他人事に思えてきてしまう。
先ほどまでオレとツィスカの間に生まれていた熱い感情は完全に鎮火。
カルラに言われるがままオレたちは、ベッドの角に並んで座った。
するとカルラは、生活指導の女性教師のように背筋を伸ばす。
それからオレたちの前を左右に往復しながら説教を始めた。
二人は睨み合ってう~う~唸っている。
どうしよう――――
兄貴としても、保護者としても、大失格な状態です…………。
カルラが反撃を始めた。
あちゃ~、結局矛先はオレに来ちゃったよ。
ツィスカの生み出すムードに負けて受け入れてしまったことが一番まずかった。
オレはベッドに座ったまま頭を垂れた。
ツィスカは腕組みをして背筋を伸ばし始めた。
頭の上には弧を描くように『えっへん』という文字がありそう。
そんな恰好をしてみせた。
カルラがオレを見ながらニコっとしている。
ははぁん、わかっててオレで遊んだわけだ。
そうだよな、全部聞いてたわけだから。
こんにゃろ!
笑顔のいたずら顔が赤くなった。
よし、釣れたか?
さあ、オレの所へ甘えに来い!
たっぷりと可愛がってやる。
ツィスカナイス!
そこでお前がノってくれたらオレの企みがバレずに済む。
よしよし、カルラが来たぞ。
両手を広げておいでポーズをしてやる。
カルラが反転してオレの膝に座ってきた。
順調順調!
よし、捕まえた!
最初は堪能しよ。
いいねえ、この流れ!
正直このまま堪能していたいところだけど、ところだけど、だけど。
――――もうちょと。
――――も、もうちょっと。
すみません、なかなか止められませんでした。
では、始めます。
抱えたままで腰を、揉むっ!
しまった、楽し過ぎてやり過ぎた。
カルラは脇を閉めたまま前転をするように床に倒れこんだ。
なんだか怖いような強烈な愛の表現のような呟きだな。
ようやく息が落ち着いてきたカルラも起き上がって話に加わってきた。
三人でベッドに入る。
まだ熱気が冷めていないから、掛布団は足元だけで。
その時、部屋の外から廊下を歩く音が聞こえてきた。
三人揃ってドアの方を振り返ってみるけど、何か見えるわけじゃないのにね。
あ、タケル抜きで話してた。
明日はタケルと二人で寝るか。
いや、待てよ?
それが狙いで話に加わらなかったとか?
元気な返事が聞こえてきた。
やっぱり狙ったか。
こいつら常に何か企んでやがる。
おいカルラ、心の声が漏れてるぞ。