Folge 71 慣れない遠出
文字数 2,007文字
着替えさせてようやく出発できる。
女子四人の露出度も随分と下がった。
これはこれで良いのだよ。
普段見ていないファッションは新鮮。
結局何を着ても、どんな仕草もありがたいのだ。
妹の目覚めレベルが八十パーセント程になったようだ。
目覚めが遅いカルラは珍しい。
昨日は余程気合が入っていたんだな。
なんて話は移動中でいいんだよ。
とりあえず出発だ。
動きの鈍い連中をなんとか引率する。
慣れない電車もなんとかクリア。
風情のある駅舎を抜けて到着感に浸る。
なんて残念なことを言うんだ。
オレは育て方を間違っていたようだ。
反省してしまう。
色々な所へ連れて行けば良かった。
ついつい家でじゃれるだけになっていたな。
尚更今回の旅行に感謝だ。
少しでも外の良さを知って欲しいな。
寧ろオレは場所を知らない。
頼むしかないよ。
と頼みはしたが。
別荘のあるブロック前まで巡回バスに乗っただけ。
案内の域に達していないぞ、美咲!
そうだよな。
育った環境が少々違うから、感覚も違うよな。
別荘があるのが普通。
ウチも親の仕事からすれば似たようなことになったかもなんだけどな。
おかげで大きめの家に住めているわけで。
立派なログハウス。
中に入る前から木の匂いに包まれる。
玄関ドアを開けるとカウベルが鳴った。
喫茶店にでも入ったような気分だ。
入るとさらにはっきりと木の匂い。
丸太の梁や暖炉、奥には階段もある。
美咲がてきぱきと動き出す。
まだ家事の類をしている姿は見たことが無かったな。
なんとなく眺めてみる。
振り返る度にキラキラと光が散っているように見える。
もし朝のミニスカートだったら。
髪の毛と一緒にヒラヒラとしてもっと綺麗なんだろうな。
脚がジーンズに隠されていても見入ってしまうのだから。
腕を人差し指でグリグリと押されている。
穴が開きそうだ。
パーカーとは違う長袖シャツ。
これも似合いますねえ。
この子もバリエーションが多くて見ているのが楽しい。
あちゃー。
ツィスカがプンプンだ。
ブツブツ――――
えっと。
物足りない感じがしていたのはそれか。
遠距離移動に別荘。
さくみさに色々と任せていたし。
日常と違うから弟妹を構っていなかったかも。
タケルなんて声すら聞いていないのでは?
ちょっとした危機回避。
嘘ではないもんね。
これも本当のこと。
甘えて来る弟妹が可愛いのだ。
たまにこっちから甘えにいく。
このパターンが好き。
動揺するほどに珍しい事。
気持ちは分かるなあ。
オレ自身が弟妹と絡むことを忘れていたぐらいだから。
まだお昼時。
昼飯でも食べればみんな落ち着くだろう。
オレも含めて。