Folge 49 観察対象
文字数 1,916文字
ま、まあ、その……なんだ。
五時半じゃさ、もう起きる時間と言えるし。
カルラも起きていたし。
いつもご飯作ってくれてありがとう、カルラ。
そんな中、お兄ちゃんは同級生の女子と――
最後まで言うのを少し躊躇った。
でも、言うべきだ。
なんなんだろ、この気持ち。
これだけ自然に話していられる。
一緒に居て欲しいのって、咲乃ってことじゃないのかな。
そう思うのは早すぎるのか?
いや、もうこの事を考えるのはやめよう。
妹の思うことも聞きたいし、美咲の気持ちもまだ聞き切っていない。
教材の整理を始めた咲乃に促されて登校の準備をする。
必要なものを鞄に詰めて一階へ降りていく。
◇
確かに。
言われてみれば、裕二も話すのはオレとだけだ。
何という下手な言い訳。
笑える。
狼狽える裕二。
いつもやられてばかりだからな。
たまには仕返しできないとな。
珍しい咲乃の笑い声が教室に響いた。
当然教室内にいる生徒達は驚いてこちらへ振り向いている。
素直に謝る裕二が見られた。
中々にレアだけど、ここは当然のことだろう。
あれからの変化はみんなに拍手されてもいいぐらいだ。
そういうものなのか。
悪い事を言ったかと思ったのに。
良かったのならそれでいいや。
何がそんな!? だよ。
観察なんてされたら普通に嫌だよ。
咲乃の目が冷え切っている。
美咲がミルクを飲んでいた時とはワケが違う。
本気で怒ると怖いのは咲乃の方か!?
素早い土下座。
余程の恐怖を感じたのだろう。
分かる、分かるぞ裕二。
ざまあみろ。
納得させられるな。
傷をすぐに癒されていたから毎日オレでいられるのか。
みんなに感謝しかないや。
頭をポンと叩かれた。
はい。
気を付けます。