Folge 40 束縛で心臓バクバク

文字数 2,093文字

こうして、ここもこうすれば、うふふ

 ――あん?

 そう言えば、力が抜けたんだっけ。

 ――その先が思い出せない。

次はこっち。こうして、こんな感じかな。うふふ

 まだ全身が麻痺している。

 しびれの酷いやつって感じ。

 これって、美咲に何かを飲まされたってことだよな。

 それしか無いか。

 美咲……。

 まさかこういうことをする子だとは思わなかった。

 それにしても、意識が戻ってきているのに身体は痺れたままとは。

 動けないし声も出せないんじゃどうにも詰んでるな。

これでサダメちゃんが起きても大丈夫。うふふ

 へ?

 何かをされたのは分かるけれど、目も開かないからさっぱりわからない。

素敵。はぁ、いつまでも見ていたい……

 うー、どういう状況なんだろ。

 段々怖くなってきちゃったよ。

 感覚無し、声が出せない、目が見えない……。

 これで耳が聞こえて意識があるってのは怖すぎるよ。

キスもゆっくり出来た。はぁ、幸せ

 キスしていたのか。

 おいおい。

 ほんとに感覚が無いんだが。

 これから何をされるのか考えたくないな。

 いっそ意識が無い方が良かった……。

 なんで耳まで聞こえるんだ。

 それなら少しは身体が動いてくれてもいいじゃないか。

サダメちゃん、そろそろ聞こえているのかな

 なんだって!?

 この感覚は意図的にされたことなのか。

 一体どうやって……。

考えても答えは出ないでしょうから気にしないの
 全てお見通し?
あなたは私のモノなの。何も考えないで

 そう言われてもさ。

 恐怖心があるんじゃ考えないわけにはいかないぞ。

今はね、頭を撫でているだけよ。怖くない、怖くない……

 いや、怖いから。

 めっちゃ怖いから!

サダメ?

 咲乃の声だ。

 様子を見に来たのか。

あれ? サダメ~。美咲~

 美咲はなんで返事をしないんだ?

 ああもう。

 朝起きた時の弟妹にしがみ付かれているのとは大違い。

 自分から何もできないのは辛すぎるよ。

 こんなことしなくても美咲になら……。

ねえ、二人共いるよね? 大丈夫?
どうしたの咲乃ちゃん
あ、カルラちゃん。二人共何の反応もないんだ
お取込み中だったとか?
物音一つしないんだよ

 オレは動けないから音も出せないけど、美咲はどうしたんだ?

 オレに話しかけていたのに……。

ボク、嫌な予感がする……
どういうこと?
もしかして、美咲が飲み物を持って行った?

 やっぱり飲まされたのか。

 咲乃が気づくってことは初めてじゃないってこと!?

うん、サダメに飲み物持って行くって
何を持って行った?
何って、ココアとミルク
あ! そっか……

 何か混ぜたことの確認にしてはおかしい。

 だって飲み物の種類って関係無いだろ。

まずいなぁ、サダメが無事ならいいんだけど、物音無いし
まずい状況なの!? 中に入ろうよ

 カルラが開けようとしているけど、鍵を掛けていたみたいだな。

 オレを閉じ込める気満々だったのか。

鍵掛かっている?
大丈夫。これで開けられるから
ヘアピン!? まるでスパイね
そんなことないわ。家の中の鍵って、キーが無くても開けられるから

 そうだった。

 ウチのドアは全部中から鍵が掛けられるけど、外側は浅い鍵溝がある。

 確かにヘアピンがあれば開けられる。

サダメ? 美咲ちゃん? ええ!?

 ええ!? ってなんだよ。

 もっと怖くなっちまうだろうが。

ああんもう! サダメごめん! すぐ外すから

 外す!?

 固定されていたのか。

 そこまでされなくても動けなかったけどな。



 どうやらオレはベッドの四つ角にガムテープで手足を固定されていたらしい。

 美咲はミルクを飲むと独占欲が覚醒するんだとか。

 なんだよそれ。

 オレと二人きりになることで緊張が限界を超えた。

 それを誤魔化そうとお酒のような気分でミルクを飲んだと。

 それが逆効果になったようだ。

ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……
わかった、わかったから。悪気は無かったわけだしさ
でも、でも!
初めて会った時から物凄く緊張する子だってのは知っているから
はあ。また兄ちゃんの異常な優しさが出てる……
ツィスカ、そこが好きなんでしょ?
カルラもじゃん
わたしは全部好きだから。サダメのために産まれたんだもの
はいはい。それにしても美咲ちゃんにそんな技があったなんてね

 技ってなんだよ。

 確かに全く歯が立たなかったけどさ。

 戦うつもりはなかったぞ。

サダメ、美咲を嫌いにならないでね
大丈夫だって。理由が分かれば問題ない。そりゃ怖かったのは確かだけど
今日の夜は精一杯お相手させていただきます!
あの、程々でいいから。ほどほどで
はい! 精一杯尽くします!

 だめだ。

 聞いてくれない……。

しょうがないわね。ドアの前で寝るから、何かあったら呼んでよね、兄ちゃん
お前、いや、お前らどうせ全員ドアの前で様子を伺うつもりだろ
当然よ。見張りは大事

 カルラの発言にツィスカと咲乃が大きく頷いている。

 なんだこいつら。

 だったらみんなで寝ればいいのに。

美咲ちゃん、やらかしちゃったね
タケル君、やっちゃった

 タケルは美咲がこうなる性質を知っていたってことか。

 あいつ。

 話した時に言えよな!

 オレが恐怖体験をしただけの一日だった。

 酷いよ……。

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登場人物紹介

名前:藍原サダメ(あいはら さだめ)

学年:高校一年生

身長:177cm


藍原家長男。家事全般苦手な上に、不器用。

名前:藍原フランツィスカ(あいはら ふらんつぃすか)

   身内からはツィスカと呼ばれている。

学年:中学二年生

身長:157cm


藍原家長女。元気でポジティブ。

名前:藍原カルラ(あいはら かるら)

学年:中学二年生

身長:157cm


藍原家次女。冷静で負けず嫌い。なぜか肌は薄浅黒い。

名前:藍原タケル(あいはら たける)

学年:中学一年生

身長:156cm


女装をすると姉より美人になるほどの美形。基本大人しいが何かと不思議君。

名前:美乃咲美咲(みのさき みさき)

学年:高校一年生

身長:164cm


サダメの同級生。隣のクラス。


名前:美乃咲咲乃

学年:高校一年生

身長:164cm


美咲の双子の妹。サダメとはクラスメイト。

名前:左近裕二(さこん ゆうじ)

学年:高校一年生


サダメの親友(?)でクラスメイト。

隣の席。



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