Folge 40 束縛で心臓バクバク
文字数 2,093文字
――あん?
そう言えば、力が抜けたんだっけ。
――その先が思い出せない。
まだ全身が麻痺している。
しびれの酷いやつって感じ。
これって、美咲に何かを飲まされたってことだよな。
それしか無いか。
美咲……。
まさかこういうことをする子だとは思わなかった。
それにしても、意識が戻ってきているのに身体は痺れたままとは。
動けないし声も出せないんじゃどうにも詰んでるな。
へ?
何かをされたのは分かるけれど、目も開かないからさっぱりわからない。
うー、どういう状況なんだろ。
段々怖くなってきちゃったよ。
感覚無し、声が出せない、目が見えない……。
これで耳が聞こえて意識があるってのは怖すぎるよ。
キスしていたのか。
おいおい。
ほんとに感覚が無いんだが。
これから何をされるのか考えたくないな。
いっそ意識が無い方が良かった……。
なんで耳まで聞こえるんだ。
それなら少しは身体が動いてくれてもいいじゃないか。
なんだって!?
この感覚は意図的にされたことなのか。
一体どうやって……。
そう言われてもさ。
恐怖心があるんじゃ考えないわけにはいかないぞ。
いや、怖いから。
めっちゃ怖いから!
咲乃の声だ。
様子を見に来たのか。
美咲はなんで返事をしないんだ?
ああもう。
朝起きた時の弟妹にしがみ付かれているのとは大違い。
自分から何もできないのは辛すぎるよ。
こんなことしなくても美咲になら……。
オレは動けないから音も出せないけど、美咲はどうしたんだ?
オレに話しかけていたのに……。
やっぱり飲まされたのか。
咲乃が気づくってことは初めてじゃないってこと!?
何か混ぜたことの確認にしてはおかしい。
だって飲み物の種類って関係無いだろ。
カルラが開けようとしているけど、鍵を掛けていたみたいだな。
オレを閉じ込める気満々だったのか。
そうだった。
ウチのドアは全部中から鍵が掛けられるけど、外側は浅い鍵溝がある。
確かにヘアピンがあれば開けられる。
ええ!? ってなんだよ。
もっと怖くなっちまうだろうが。
外す!?
固定されていたのか。
そこまでされなくても動けなかったけどな。
どうやらオレはベッドの四つ角にガムテープで手足を固定されていたらしい。
美咲はミルクを飲むと独占欲が覚醒するんだとか。
なんだよそれ。
オレと二人きりになることで緊張が限界を超えた。
それを誤魔化そうとお酒のような気分でミルクを飲んだと。
それが逆効果になったようだ。
技ってなんだよ。
確かに全く歯が立たなかったけどさ。
戦うつもりはなかったぞ。
だめだ。
聞いてくれない……。
カルラの発言にツィスカと咲乃が大きく頷いている。
なんだこいつら。
だったらみんなで寝ればいいのに。
タケルは美咲がこうなる性質を知っていたってことか。
あいつ。
話した時に言えよな!
オレが恐怖体験をしただけの一日だった。
酷いよ……。