Folge 85 開けられた扉
文字数 1,415文字
美咲の手伝い、終了。
バーベキュー場所の傍にある水場で手を洗う。
二人共手洗いが済んで手を拭いて……。
どちらからともなく、手を繋いだ。
極自然過ぎて、繋いだ実感が湧いた瞬間に緊張した。
良かった。
女の子に対して何が正しい行動なのかが分からなくて。
今更に。
他の女子ならこんなことは聞き辛かったかもしれない。
でも。
今では傍にいるのが普通となった美咲。
なんでも聞くことができて、どんなことでも聞いてあげられる。
もしかして、オレって女子にとっては落としにくいのだろうか。
以前、咲乃もそんなことを言っていたな。
扉を開けてくれないと。
意識しているわけではない。
けれど、簡単には心を許さないのか。
自己分析なんてあんまりしないけどさ。
してみるとそうなのかも、と思った。
開くまで扉を叩き続けたさくみさ。
扉を開いた人には手厚くなる。
開けたことで気持ちが本物なのだと確信できるということか。
さくみさ。
オレにとってこの双子は……。
貴重な出会いを運んできてくれたのかも。
ならば逃してはいけない。
なんてこった。
オレはとんでもない幸運の持ち主なのでは!?
ギュッと手を握る。
空いている手で繋いでいる手を包む美咲。
そしてポンポンっと軽く打つ。
頑張ってまで寄って来てくれた。
こんなの……。
こんな人……。
大事にするしか、無いよ。
自分たちが求める環境が手に入る場所か。
魅力的だけど。
綺麗な笑顔だなあ。
まさかこの話で見られるとは思いもしなかった。
出会ってからの時間はそんなに経っていないはずだ。
それなのに。
何か大きな壁を超えた関係になっているように聞こえたし、思えた。
正直、その気持ちに甘えたい自分がいる。
だってさ、さくみさとは……離れたくなくなっているのだから。
長女の元気な声が出迎えてくれた。
気づけば恋人繋ぎってのをしていたよ。
とても気分のいい散歩になったな。
気兼ねない相手が増えてくれたこと。
これはとても助かる。
癒される人はいくらいても困らない。
どころか、オレは恵まれすぎだろう。
あちらから来てくれたのだから。