Folge 84 二人きりの妙
文字数 1,904文字
全員がオレの回復を待ってくれた。
待つ時間を利用して談笑していたとも言える。
結局、あれから睡魔に負けて軽く眠っちゃった。
ああ。
誰かが頭を撫でている。
ここにいる連中なら、誰が撫でていても嬉しい。
ふむ。
この撫で方なら咲乃だ。
いや違う。
咲乃の手に凄く似ているが……。
似ているのに違うというと、美咲!?
美咲とはあまりスキンシップが無い。
そう。
実は無いんだよ。
思い出した。
片づけの手伝いを約束していたっけ。
そのお誘いかな。
風呂の休憩所に長くい過ぎたかな。
オレの扱い方について本人の前で語り合わないで。
妙に照れ臭いよ。
でも約束があったから起きなきゃ。
座っていた二人用ソファーで横になっていたようだ。
力が抜けてそのまま横に倒れたんだな。
少し首が痛いや。
やっぱり撫でていたのは美咲だった。
へえ。
あんな感じなのか。
カルラとはまた違う絶妙な優しいタッチだった。
心地よかったな。
咲乃の圧が強いのも気持ちが良く分かって好き。
でも優しさが伝わるのは温かい。
いつまでも触れていたくなる。
その相手になる当事者のオレが言うのもなんだけど。
実際、あまり接触が無いのも寂しいからなあ。
もう近づいて欲しくなっているから、こういうことが美咲とも増えて欲しいな。
……増えて欲しいのか、オレ。
再びぞろぞろと温泉から別荘へ戻る。
振舞われたアイスを食べたり風呂上りを改めて満喫。
そこで美咲から片づけの誘いがきた。
二人だけでバーベキューの場所へ向かう。
ゆっくり二人きりの時間はあったけれども、どれもイレギュラー感が否めない。
ようやく極普通な会話の時間になりそうだ。
あの告白を受けたのは自分だ。
気持ちを痛いほど感じていた。
なのに一歩、もしくは二歩下がったような控え方をされていた。
その所為で美咲の気持ちが分かりにくかったんだよな。
美咲の気持ちを確認できたのかな。
今のところの。
オレの事を好きでいてくれる人を大切にはしたい。
――――ただ、それだけなんだ。