Folge 54 デレモード
文字数 1,880文字
テストが。
テスト期間が近づいている。
まだ詰め込み切っていない。
でも弟妹と一緒に寝たいし。
それはテストが終わってからゆっくり堪能すればいい。
分かっているんだけど。
両腕を二人にガッチリ掴まれている。
長女はすっかりデレデレ。
頬ずりが止まらない。
苦笑いになってしまった咲乃。
オレとの距離を縮め始めたところで剥がされてしまった美咲。
後ろを並んで歩いている。
このあと離れるポイントがあるんだから、そこまでは我慢してくれ。
そしていつもニコニコのタケルが最後尾で観覧。
軽く唇を重ねてひらりとスカートをなびかせ、鞄を後ろ手に持つ。
決まっているんだよね、その動き。
カルラさんは今日も美人です。
なんじゃこりゃ。
くっそ可愛い。
これ、演技ってわけじゃないんだよね。
素でこうなるんだ。
こんな子が妹だよ。
なんでも受け入れてしまいそう。
お外ですが。
その、もうね、ご近所さんも気にしないぐらいの日常。
色々と構わず、しちゃいます。
というあちらの姉妹の声も聞こえつつ、まったりと。
とろんとろんになっているツィスカ相手に止められますかって。
無理無理。
どっちみち、これぐらいしないと学校行ってくれないし。
オレも、久しぶりだから、ね。
思いっきりしちゃいました。
どう見てもそんな感じだな。
時間があるならもっとしてあげるところだけど。
カルラと手を繋いで中学校へと歩き出した。
振り向きながらカルラが手を振っている。
それに答えていると、タケルが登場。
片手を出してくるからこちらも出す。
フィスト・バンプからの握手。
弟もこれでにっこりとして姉についていった。
待ち構えている男子生徒が懲りずに妹に近寄っていくのが見えた。
また鞄で蹴散らすのかなとみていると、しない。
ツィスカが殴らずに歩みを進めている。
しかし、男子生徒はその場に立ち尽くす。
その後しゃがみこんだ。
どうやら落ち込んでいるらしい。
そういうことだ。
だが今日の妹は二人共ご機嫌。
攻撃を全くしないようだ。
今日あの中学校は、静かだろうなあ。
ライバルがいなくなったとたん、次の双子に両手を繋がれる。
どうも手ぶらで歩くことはできないらしい。
一人で歩けばいいんだけどさ、一人で出歩かせてもらえないからね。
双子に挟まれて歩くスタイルは変わらず自分の学校へ向かう。
校舎の窓から多数の目線を感じるようになってきた。
まもなく校門だ。
そりゃ目立つよなあ。
双子じゃなくたって、男子一人が女子二人と手を繋いで登校している。
そんな絵面、どう考えても一般的ではない。
でもそれがオレの日常。
以前はなんでこんな目に、なんて思ったりしていたけれど。
最近はこうじゃなきゃなんて思っている。
完全に麻痺したな。
今のところ、直す気は全くありません。