Folge 33 弟と。
文字数 2,975文字
いやぁ、お風呂の時間だってさ。
って、美乃咲姉妹もいるけどどうするの?
藍原家仕様では入らない、よね?
否定しないの!?
彼女なのは咲乃なのに。
オレにはまだ気があるってことだろうか。
自意識過剰かな。
オレ、モテたことないからわからないんだよ。
彼女の咲乃が遠慮しているのに美咲が入る気はある。
美咲の気持ちってどうなっているの?
その前に同級生同士で、それも女子と一緒にお風呂に入るってのは無いだろ。
いくら付き合っていても無い、よね?
そういえば。
タケルと二人きりで風呂に入るなんて滅多に無いな。
仕切りのツィスカが決めてしまいました。
話が早くて凄く助かっている。
兄のオレが妹に仕切ってもらって弟と風呂に。
オレ、家の事で何か指示出したことあったっけ。
いかんいかん。
またダンジョンに潜っていたみたい。
ほんと最近潜るのが増えているから気を付けないと。
毎回思うだけで実行できていないな。
情けない。
ああもう!
う。
自分で両手ビンタするのも結構痛いな。
さ、風呂に入ろう。
タケルは頭を洗いながらそんなことを言ってくれる。
弱腰か。
子供からは成長しているから、色々と気にするようになったもんな。
知らないうちに変わっていたのかも。
それがこいつらの不安に繋がってしまうのなら、気を付けないとな。
自分が築いていた
自分こそ、その
髪の毛を洗い終わったタケルはこちらを振り向いた。
おいおい、なんだよその満面の笑みは。
女子が見たら全員纏めて気絶させられるぞ。
耐えられるのは妹たちしかいないだろう。
今この笑みを見られるオレは幸せなんだよな。
これが続くようにするためにも、忘れていた
タケルが立ち上がり、イスに座るよう促してきた。
では、お言葉に甘えて。
シャワーの当たる角度が自分で洗う時と違うから新鮮だ。
髪の毛全部を満遍なく濡らされて、え?
目が開けられないようにって意味があったの!?
タケルは今、後ろから肩越しに抱き着いている。
見えていないと妹たちと同じに思えるのがこいつの凄い所だ。
タケルって何で出来ているんだろ。
不思議な子だ。
魅力が材料としか思えないぞ。
抱きしめる腕に力が増される。
そう。
タケルは合気道壱級所持者。
少し気合が入ると一般的な人よりは強い力が発揮されてしまう。
合気道を続けていれば階級は随分と高くなっていたことだろう。
しかし本人は家族が守れる程度の力があれば十分だと。
いざという時の自分の役目を作っておきたいだけとのこと。
ただの守られる末っ子では居たくないらしい。
そういう健気なところが可愛いんだよね。
さっきから目は閉じらされているけれどね。
頭を洗われるのはグルーミング効果で安らぐ。
タケルも力加減が絶妙で。
このまま寝てしまいそうだよ。
なんとか眠気にも勝ち、身体も洗って湯船の時間。
家族で入ることを考えられている風呂。
二人なら余裕だ。
この辺は親に感謝する部分だけども、いつ帰ってくるんだよ。
ニヤリとした笑みなんぞ浮かべながらそんなことを言ってくる。
さては聞いてくるのを分かっていたのか。
もしくは待っていたのか。
いや、そういう気になっていたとは違う、違わない、違う?
聞かれると訳が分からなくなる。
タケルに相談か。
何を?
見当がつかない。
楽しいのに楽しくないって?
聞いているこっちまで微妙な感じになるじゃないか。
タケルは壁に背中を預けた。
天井を見上げて少しジッとしている。
相談されている時のことを思い出しでもしているのかな。
ほお。
タケルがそんなに手こずっていたなんて。
珍しいと思ってしまうけど、実はいつも悩む事はよくあったのかな。
もっと話しをするようにしないと。
この前みたいに構ってくれと爆発したこともあるわけだし。
明らかに普段の話しが足りないってことだよな。
反省。
明るい顔になったタケルが天井からオレに目線を下ろした。
ありゃりゃ。
年々弟妹からのアタックが強くなっていく。
嬉しい悲鳴だな。
時々ほんとに身体が悲鳴をあげるけど。
とりあえず、タケルの問題を一つは解決できたのかな。
後は相談事だけど、今後は何かあれば話してくれるだろう。
そうすればオレもスッキリするわけだから。
一件落着っと。