Folge 45 夏のイベント

文字数 2,110文字

あの、早いんですけど
一週間もあったじゃない
ボクなんて体験終わってから一週間経っているよ
咲乃ちゃん、よく我慢したわよね。もっと荒れるかと思った
だって、嫌われたくないもん
咲乃は同じクラスだからいいわよ。私、会えないんだから!
授業以外はずっと一緒だったのに

 最近の藍原家。

 女子会が毎日開かれている。

 賑やかだ。

 それも二組の双子。

 レアだよなあ。

 妹たちが楽しそうで何よりではある。

 ちょいちょいマウントの取り合いになるのが笑える。

それでさ、テストが終わったら夏休みになるし
そうね。今年は中学最後の夏を満喫したいわね

 そうなんだよ。

 夏休みが近づいている。

 休日が毎日になるんだよ。

 オレ部活やっていないし、この身を守ることが出来る気がしない。

 朝から晩まで……だろうなあ。

ねえ、サダメ。また迷い込んでいるの?
ふえ? あ、いやいや。カルラなんだった?
もう、聞いていないじゃない。美乃咲家の別荘を使わせてもらえるらしいのよ
凄い。そういうの本当に持っているんだな
借りられるならさ、宿泊費が浮くから行けるかなって

 ここまでの話を聞いていなかったからさっぱりわからん。

……ところで、何の話?

 全員がオレに振り向いた。

 どうやらやらかしてしまったようだね。

兄ちゃんはさあ……まあ、兄ちゃんだったわ
なんだそれ。酷い気がする
みんなで遊びに行こうってことよ
何をしに?

 今度は全員が呆れた顔をする。

 オレ一人浮いているな。

 いつものことだから慣れっこだい!

夏らしいことしましょってことよ。お泊りありの夏遊び
ふむ
ノリが悪い!

 長女がプンスカしている。

 そう言われても。

ウチってそういうこと全然してこなかったから、ピンと来ないよ
そうなの!? って、ウチもだけど

 美乃咲姉妹も引きこもりだもんな。

 ウチと同じく旅行の類は経験無しか。

このメンバーならさ、行けることない? ね、兄ちゃあん

 おねだりしてますアピールの甘え声出すなよ。

 可愛いけど。

そういうことなら、行くか

 全員が拍手して喜んでいる。

それじゃあ調べものは僕と兄ちゃんでやろうよ
いいぞ。寧ろそれが男子チームの役目かな
後は女子で手分けしましょう。ある程度は別荘の方で用意できるはずだけど

 そんな感じで夏休みらしいことを珍しくすることに決定。

 実はそういうことできなくて弟妹には申し訳ないなあと思っていた。

 断る理由は全くない。

 思い出になるようなことを残せていないんだ。

 美乃咲家には感謝だな。

 よし、オレも満喫できるように頑張りますか!

ところで彼女の件なのですけど

 オレの彼女になる体験というとんでもない企画が終了して久しい。

 終わってからはツィスカが有耶無耶にして保留状態。

 弟妹がオレと寝られないことに耐えられなくなった、というのが理由。

 どうも不眠症になっていたようで。

 それはオレも心配で寝られなくなってしまう。

 ということで、一旦元通りに。

 タケルを含めた三人は、オレと一緒に寝る毎日で体調もご機嫌も良い。

 嬉しいし可愛いよな。

 オレも慣れ親しんだ睡眠スタイルでぐっすりと眠れている。

 それもあってか、旅行の話に賛成できたのかもしれない。

まだ兄ちゃんの彼女になりたいの?
なりたいわ!
なりたいよ!
そっかあ。兄ちゃんが四人も彼女にして大丈夫かなあ
は!?

 なぬ!?

 彼女が四人!?

 なんという話だ。

 さすがにそれは酷いだろ。

それは無いだろ
すでに二人彼女がいるんだから、もう二人増えてもいいじゃない
いや、良くないって
双子だから、二人みたいなものよ
お前たちはそれでいいのかよ

 妹がこんなこと言うとは。

 二人以外とオレが接触することを完璧に防御してきたのに。

 心境の変化が起きるなんてね。

 ちょっと寂しい。

サダメ、私だけを愛していればいいのよ
こら! あたしを差しおいて何を言っているの!
いつも通りのことを言っているのだけど
ちょっと待った! それって、良くないってことだろ?

 二人は目を合わせてテンションを下げた。

 そして同じ言葉を発する。

悩んでいるの

 はあ。

 こいつらはさあ。

 可愛いなあもう。

とりあえずそういうの無しにしよう。全ての事をそれ前提って、辛いから

 美乃咲姉妹は話の合間で何度か割り込みたそうにしていた。

 でも、割り込めないままオレからの答えを聞いて黙り込む。

無理してすることじゃないんだから、その話は置いておこうよ

 そして旅行を楽しいものにしようということに話を戻す。

 なんとか修正したけれど、気を使うなあ。

 いや、まずはオレが楽しむことを考えないとみんなが楽しめないよな。

 タケルとセッティングを頑張りますか。

タケル、早速情報を仕入れるところからやろうな
うん! 兄ちゃんと何かするの楽しみだよ

 そういうことなんだ。

 楽しみってのを大事にしないと。

 タケルの一言は説得力がある。

 今回もこの一言を聞いただけで女子四人も納得してくれたようだ。

 さて、藍原家には珍しいイベントだ。

 近所では祭りの類は随分前から無くなってしまっていた。

 花火大会へ行くこともしていない。

 恒例にならなかったんだ。

 初めてのイベントと言っていいことに挑戦。

 分からないことだらけだけど、さあ、楽しもう。

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登場人物紹介

名前:藍原サダメ(あいはら さだめ)

学年:高校一年生

身長:177cm


藍原家長男。家事全般苦手な上に、不器用。

名前:藍原フランツィスカ(あいはら ふらんつぃすか)

   身内からはツィスカと呼ばれている。

学年:中学二年生

身長:157cm


藍原家長女。元気でポジティブ。

名前:藍原カルラ(あいはら かるら)

学年:中学二年生

身長:157cm


藍原家次女。冷静で負けず嫌い。なぜか肌は薄浅黒い。

名前:藍原タケル(あいはら たける)

学年:中学一年生

身長:156cm


女装をすると姉より美人になるほどの美形。基本大人しいが何かと不思議君。

名前:美乃咲美咲(みのさき みさき)

学年:高校一年生

身長:164cm


サダメの同級生。隣のクラス。


名前:美乃咲咲乃

学年:高校一年生

身長:164cm


美咲の双子の妹。サダメとはクラスメイト。

名前:左近裕二(さこん ゆうじ)

学年:高校一年生


サダメの親友(?)でクラスメイト。

隣の席。



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