Folge 48 寝落ち
文字数 1,577文字
今日のベッドは硬いな。
その前に、変な寝方をしているぞ。
ああそうか。
勉強していてキリがついた所で寝落ちしたのか。
終わったと呟いた所までは覚えているけどその先はさっぱり。
どうも机に頭を落とした後で意識が飛んだようだ。
首が痛い。
タコの吸盤みたいに机にくっついている耳も痛い。
ヨダレは……大丈夫そうだ。
今は何時だ?
じかん、じかん――四時十分。
また中途半端な時間だこと。
でもまた寝るのは怖いな。
あいつらが起こしてくれるはずだけど。
せっかくだから少し進めるか。
テスト期間までは一週間ある。
しかし全教科一から目を通さなきゃならない状況。
少しでも頭に詰め込まないと間に合わない。
これが嫌で授業はしっかり受けていたのに。
女の子にドキドキしていただけとは。
我ながら情けない。
ん?
あ。
いつも情けないやつだった。
嫌な事はスルーするんだ。
あ、ダジャレ。
そんなわけないから。
――寝起きは変な事を思いつくな。
シンプルに麦茶。
もう夏だねえ。
カラッカラの喉にはお茶の方が助かる。
……あれ?
オレ、一人じゃなかったっけ。
机に両肘をついて頬杖にしている。
軽く横目にしながら話をしているんだが。
寝起きなのもあって、口が緩い。
思ったことをそのまま口に出してしまう。
頭撫でちゃう。
猫みたいに目を閉じてにっと笑みを見せてくる。
頬杖を崩し、片腕をオレに伸ばしている。
そして細い指が腕を掴んできた。
掴んだ腕を引っ張られるのかと思ったら、彼女がスゥっと寄ってきた。
上目遣いで目線を合わせてくる。
こっちもロックオン。
未明の空気感が雰囲気を演出しちゃって。
これ以上コイツを可愛くするなよ――
極自然に二人の唇は重なった。
こんなムードでするのもいいな。
癖になりそう。
その上、咲乃がいつもより綺麗に見えて。
なんだよこれ。
最高じゃないか。
気づけば互いの指を絡ませて両手をがっちり握り合っている。
カルラか。
もう起きたのかな。
そういや時間は――
おでこをツンと指先で押された。
テスト勉強せずに何をしているんだ。
はい、イチャついているんです。
寝落ちするのも、いいものですね。