Folge 77 アイス

文字数 1,306文字

 夏。

 避暑地にいる。

 とういことは……アイスである。

全員、無言だな

 避暑地とは言え、日差しに当たれば暑い。

 慣れない土地に普段より多い歩数。

 喉も乾くし、気温に負ける。

 それを見越してか、ケアショップが多い。

 健康維持のお店ではなく、ファーストフードね。

あのさ、無心に食べている姿が可愛いんだが
兄ちゃんがそういうことをサラッと言うようになったね
……そうだな。確かにサラッとな
いいんだよそれで。あたしは嬉しいしかないから
食べている所は見られるの嫌なはずなのに、サダメなら嬉しいのよね
不思議だよね~

 それは不思議だ。

 兄、だから?

 お互い知り尽くしているから?

 見られたいというフェチ?

いい?

 日陰のベンチに座っている。

 日差しを遮っているはずが、さらに影が出来た。

 陰の正体は咲乃。

 オレの膝を指差していた。

どうぞ

 人数に対してベンチのスペースが足りない。

 さくみさが座らずに譲ってくれていたのだが……。

 咲乃はターンをして尻から膝へと着座した。

 アイスを食べながら美人の背中を眺める。

 さくみさも妹と同じく長髪。

 垂れた髪からは芳香が鼻を喜ばせに漂ってくる。

 素晴らしい休憩時間。

美咲はタケルの膝借りる?
あ、どうしましょうか
そりゃ兄ちゃんがいいでしょ?
いえ、タケル君が重くて困るんじゃないかと

 重い?

 いやいや。

 背は高めだけども、細いから軽いでしょ。

こいつは合気道やっていたでしょ? だから安心しなよ
なんかね、ボクは格闘が強いんだって
格闘するんですか!?
習っていた時はしたけど、普段はもちろんしないよ
ですよね
なんだ、てっきり知っているんだとばかり
初耳でした

 色々と話していたであろう頃。

 それぐらいのプロフィールは話してあると思っていた。

 タケルも視野に入れていたようだったから。

立ったままも疲れるから、ちゃんと休んでおきなよ
それで膝の上に座ると言うのも凄いですけど
中一男子に高一女子が乗る。確かに凄いかも

 座りかけた美咲は立ち直す。

やっぱりやめます!
ごめんごめん! 悪い冗談でした。休んでください
……もう

 少々頬を膨らませながらも、ちょこんと膝に座った。

 やはりタケルは平気な顔をしてアイスを食べている。

咲乃は楽しい?
うん。嬉しいし楽しいよ
そりゃ良かった

 関わってくれた人には良い想いをしてもらいたい。

 どうしてもそう思うんだ。

 肌に合わない人はお互いに仕方がないけどさ。

 受け入れ合える人とは常に良い想いをしていたい。

 おっと、アイスが溶けてきた。

 残りは少し無理をして全部口に頬張る。

 両手を空けて、咲乃の背中を抱えた。

 これがしたくて急いで食べたのは内緒。

サダメ? ボクにもしてくれるんだね
うん、今したくなったから。嫌?
そんなわけないよ。ボクにもさ、いつでもどうぞ
任せろ。甘えちゃうぞ~
楽しみだなあ。甘えられるのっていつもの逆だから

 どんどん自分から動いてしまう。

 これはやはり、旅行マジックなのかな。

 雰囲気に流されやすいというか。

 本音が出やすくなるのか。

 ……本音が出やすい、か。

 本心で動いているなら、素直になったってことか。

 気持ちを出していなかったんだな。

 扉が開いたんだなと、実感した。

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登場人物紹介

名前:藍原サダメ(あいはら さだめ)

学年:高校一年生

身長:177cm


藍原家長男。家事全般苦手な上に、不器用。

名前:藍原フランツィスカ(あいはら ふらんつぃすか)

   身内からはツィスカと呼ばれている。

学年:中学二年生

身長:157cm


藍原家長女。元気でポジティブ。

名前:藍原カルラ(あいはら かるら)

学年:中学二年生

身長:157cm


藍原家次女。冷静で負けず嫌い。なぜか肌は薄浅黒い。

名前:藍原タケル(あいはら たける)

学年:中学一年生

身長:156cm


女装をすると姉より美人になるほどの美形。基本大人しいが何かと不思議君。

名前:美乃咲美咲(みのさき みさき)

学年:高校一年生

身長:164cm


サダメの同級生。隣のクラス。


名前:美乃咲咲乃

学年:高校一年生

身長:164cm


美咲の双子の妹。サダメとはクラスメイト。

名前:左近裕二(さこん ゆうじ)

学年:高校一年生


サダメの親友(?)でクラスメイト。

隣の席。



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