Folge 77 アイス
文字数 1,306文字
夏。
避暑地にいる。
とういことは……アイスである。
避暑地とは言え、日差しに当たれば暑い。
慣れない土地に普段より多い歩数。
喉も乾くし、気温に負ける。
それを見越してか、ケアショップが多い。
健康維持のお店ではなく、ファーストフードね。
それは不思議だ。
兄、だから?
お互い知り尽くしているから?
見られたいというフェチ?
日陰のベンチに座っている。
日差しを遮っているはずが、さらに影が出来た。
陰の正体は咲乃。
オレの膝を指差していた。
人数に対してベンチのスペースが足りない。
さくみさが座らずに譲ってくれていたのだが……。
咲乃はターンをして尻から膝へと着座した。
アイスを食べながら美人の背中を眺める。
さくみさも妹と同じく長髪。
垂れた髪からは芳香が鼻を喜ばせに漂ってくる。
素晴らしい休憩時間。
重い?
いやいや。
背は高めだけども、細いから軽いでしょ。
色々と話していたであろう頃。
それぐらいのプロフィールは話してあると思っていた。
タケルも視野に入れていたようだったから。
座りかけた美咲は立ち直す。
少々頬を膨らませながらも、ちょこんと膝に座った。
やはりタケルは平気な顔をしてアイスを食べている。
関わってくれた人には良い想いをしてもらいたい。
どうしてもそう思うんだ。
肌に合わない人はお互いに仕方がないけどさ。
受け入れ合える人とは常に良い想いをしていたい。
おっと、アイスが溶けてきた。
残りは少し無理をして全部口に頬張る。
両手を空けて、咲乃の背中を抱えた。
これがしたくて急いで食べたのは内緒。
どんどん自分から動いてしまう。
これはやはり、旅行マジックなのかな。
雰囲気に流されやすいというか。
本音が出やすくなるのか。
……本音が出やすい、か。
本心で動いているなら、素直になったってことか。
気持ちを出していなかったんだな。
扉が開いたんだなと、実感した。