Folge 01 藍原家の朝
文字数 2,162文字
藍原家の朝は――はやい、おもい、うるさい。
早い理由は弟妹達曰く、『兄ちゃんとイチャイチャするため』。
今日も三人はオレのベッドに潜り込んでいる。
布団なのか、抱き枕なのか、図体のデカい猫なのか。
オレはこいつらの重さと熱さと感触で早起きさせられているわけだ。
オレの目の前に尻が鎮座している。
息苦しかったのも早起きした原因か。
とりあえず揉んで確かめてみたいが――どうにも両手が掴まれていて動かせない。
仕方がないから――そう、仕方がないから尻に頬を当ててみる。
カルラの尻の心地良さを楽しんでいると、二度寝しそうになる。
毎日この誘惑に悩まされる。困っているとは言っていない。
あと、両腕が使えないのも困るな。左は……フランツィスカか。
じゃあ、足に乗っかって右手を掴んでいるのがタケルだな。
重いって。
この状態になっても朝まで寝ているオレもオレだけど。
タケルが起きた。右手を離してくれたのはいいけど、両足に抱き着いてきやがった。
太ももを枕にするな。
その――場所が悪い。
タケルはさらにキツク抱き着いてきた。
駄目だ、こいつ退く気が無い。
ツィスカはオレがそう言ったとたん、ガバッと上半身を起こした。
ツィスカはタケルの腰を思いっきり揉んで、弟を笑い地獄へ突き落とす。
っつーか、ツィスカの反応早かったなあ。全員寝たふりしていやがったってことか。
――いつものことだけど。
強制的にベッドの下へ笑いと共に転がり落ちてったタケル。
姉に遊んでもらって楽しそうだ。よきよき。
続いてツィスカの標的はカルラになるわけだ。
カルラは隙をついてオレの頭の横で割座になる。
ツィスカへの防御態勢に入ったみたいだ。
カルラはロングで乱れた髪を左から右へ手でかきあげる。
おもむろに顔をオレに近づけてきて、キスをした。
カーテンの隙間から差し込む朝日が、カルラの髪の間をすり抜けている。
何、この綺麗な光景は。
ツィスカが憤慨してカルラにヘッドスライディングアタックを試みる。
カルラも寸前でそれをかわしたけど、オレの顔に乗っかるなよ。
ツィスカはただのヘッドスライディングになってしまった。
その姿勢からすぐに起き上がり、カルラへの攻撃を継続しようとする。
カルラはヒョイっとオレを超えてベッドを下り、逃げていった。
部屋のドアを開けてこちらを振り返り、オレに朝の挨拶をしてくる。
そういって、カルラと同様に乱れた髪をおでこから後ろへ撫でる。
顔がはっきり見えるようにしてから、軽いキスをしてあげた。
うわぁ、乱れた髪で寝起き顔のジト目。
これは言うこと聞くしかあるまい。
こんな可愛い妹に求められちまったらしょうがない。
拒否ったら確実に罰が当たるだろう――まあ、拒否る気は無いけど。
では失礼して。
ツィスカは随分満足してくれたみたいだ。
強いハグをしながらそんなことを言っている。
どんなのをしたかは内緒。
ご機嫌なツィスカが部屋を出ていった。
オレはもう昼下がりぐらいの気がしているよ。
気だるい――だが妹に起きろと言った手前、起きないわけにもいかない。
起きるか。
ベッドから降りたらやわらかい感触が足元から伝わってきた。